「AI契約チェックは違法の疑い」の衝撃的な中身 法務省判断は急成長のリーガルテックに激震

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AI契約レビューサービスは、チェックをかけたい契約書へのチェック方法がサービス提供者(事業者)によって異なる。サービス提供者があらかじめ作成したレビュー方針に基づいてチェックをかけるものもあれば、サービスを受ける側が過去に作成したひな型と比較してチェックをかけるものもある。チェック後に表示される結果も、リスクの有無や解説、修正事例まで出るものもあれば、単に比較した対象との違いだけが表示されるものもある。

利用者は主に大企業の法務部門と、比較的規模が小さい弁護士事務所で、最大手のリーガルフォースは今年9月末時点で、顧客数が2500を超えたことを公表している。

都内で小規模事務所を経営する弁護士は、既存のAI契約レビューサービスを利用しているが、「弁護士の基本業務である契約書のチェックには、過去の判例や法律家の論文などを参照する作業が伴う。AI契約レビューサービスを使うと、パラリーガル(弁護士業務をサポートする専門のアシスタント)を雇用するよりも遥かに安いコストで、それらが瞬時にそろう。依頼人と向き合ったり、助言内容を考えたりすることに、より多くの時間を割くことができるようになった」と語る。

従前から「72条違反の可能性」を指摘

その一方でこの弁護士は「以前から弁護士会内部では、弁護士法72条に抵触する可能性を指摘する声が出ていたことは事実」と指摘する。

弁護士法72条は、①弁護士もしくは弁護士法人ではない者が、②報酬を得る目的で、③訴訟事件や一般の法律事件に関して、④鑑定、代理や仲裁、和解などの法律事務を、⑤業として行うことを禁止している。①~⑤すべてに該当すると72条違反になり、該当しないものが1つでもあれば違反にならない。

72条違反の可能性を指摘する弁護士は、AI契約レビューサービスが、弁護士もしくは弁護士法人ではない者が提供する、一般の法律事件に関する鑑定業務に該当するのではないかと考えている。

②と⑤が該当するのは当然として、既存のサービスの提供者の大半は株式会社であって、弁護士でも弁護士法人でもないので、①については大半の事業者が該当してしまう。既存のサービスの提供者は、弁護士事務所を経営する弁護士が事務所とは別に創業し、代表を務めているケースが多いため、弁護士が提供しているサービスと考えがちだ。

だが、72条違反かどうかの判断に誰が代表かは関係がない。それなら弁護士法人で提供すれば問題はないが、弁護士法人に出資できるのは弁護士だけ。弁護士個人がベンチャーキャピタルなどから出資を受け、その資金を弁護士法人に出資することは脱法行為にあたる。

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