コロナとインフル「75万人感染」想定に尽きぬ不安 同時爆発に対する政府対応策の実効性は不透明

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医療体制が夏から大きく変わっていないならば、この冬に政府が想定する最悪の感染状況が発生した場合、医療現場や調整に当たる関係機関は再びパンク状態に陥ってしまう。

厚労省は夏以降、新型コロナ感染者の「全数把握」を見直したほか、自宅療養者の健康観察や相談対応を担う「健康フォローアップセンター」を自治体ごとに整備した。それに伴い、患者の来院数や問い合わせなど、医療機関側の負担は一部軽減されたとしている。

ただ、医療機関がどれほどの発熱患者を受け入れる能力があるかは現時点で把握できていない。

各都道府県は、新型コロナの発熱患者らを診療する医療機関を「診療・検査医療機関」として指定している。厚労省は10月17日に都道府県向けの説明会を行い、この発熱外来を受け付けている機関について、1日当たりに診療可能な患者数の調査・報告を呼びかけた。11月をメドに、調査結果をとりまとめるという。

人口10万人当たりの発熱外来の指定機関数の比較

発熱外来の指定機関数を人口10万人当たりで見ると、最多の鳥取県は約57.5件に対し、千葉県は約15.3件などと、大きな地域格差が生じている。

各医療機関の規模によって患者の受け入れ能力は異なるため、指定機関数の差が医療体制の偏在性を示しているとは必ずしも言えない。しかしその実態を把握できるのが11月以降となると、本格的な流行期までに地域ごとの偏りを是正するのは至難の業だ。

自己検査と自宅療養を促す方針だが・・・

そこで厚労省などは、新型コロナとインフルについて早めの予防接種を呼びかけている。加えて、限られた医療資源での対応を実現すべく、重症化リスクの高い人以外については電話診療やオンライン診療、かかりつけ医での診断を促す方針を打ち出した。重症化リスクが高い人には高齢者や小児、妊婦、基礎疾患のある人たちが該当し、最悪の感染者数75万人のうち約30万人を占めると想定している。

だが、政府が掲げる対応策の実効性には不透明な部分が多い。

厚労省はまず、流行が落ち着いている現段階では、コロナの抗原検査キットと解熱剤の事前購入による備えを呼びかける考えだ。今後感染が拡大した段階において重症化リスクの低い人が発熱した場合、原則として自己検査と自宅療養を促すこととなるためだ。

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