コロナとインフル「75万人感染」想定に尽きぬ不安 同時爆発に対する政府対応策の実効性は不透明

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ただ検査キットはこれまでに何度も需給が逼迫し、店頭などで品薄となってきた。政府はメーカーの在庫分で2.4億回分が確保されており、現在市場に流通するものと合わせて十分量が供給できると見込んでいるが、全世帯への支給などが行われない限り、国民が満遍なく入手できる保証はない。

一方の解熱剤についても、今年の夏には医療機関や店頭などで一部の商品を買い込む傾向が見られ、地域によっては品切れが相次いだ。政府は各メーカーに増産を呼びかけていくという。

東京都医師会が示した懸念

では感染拡大局面で重症化リスクの低い人が実際に発熱したら、具体的にどんな手順を踏むのか。

まず、コロナの検査キットで自己検査を行い、陽性の場合は健康フォローアップセンターに登録する。もちろん、症状が重い場合は対面での診療が必要だ。

発熱外来を受け付けている医療機関
発熱外来を受け付けている全国の医療機関がどれほどの患者を受け入れる能力があるか、現時点では把握できていない(記者撮影)

問題はコロナが陰性だった場合だ。厚労省の対応方針では、オンラインや電話での診療などにより、インフルか否か判断してもらうことを促している。

しかしこれについて東京都医師会などは疑問を呈し、近くの医療機関で直接診断を受けることを勧めている。遠隔診療のみでインフルと診断し、抗インフル薬を処方することに問題があると見ているからだ。

また、成人では肺炎、小児では手足口病など、発熱症状を伴うさまざまな病気がある。「対面でなら当然分かる病気を、遠隔診療では見逃す可能性がある」(東京都医師会の鳥居明理事)。

鳥居理事は、できるかぎり受診抑制を起こさないためにも、発熱外来の増強が必要だと強調する。また、病床確保について10月から補助金支給のルールが見直されたことにより、すでにコロナ患者向けの空床確保をやめた医療機関もあるという。そのため政府による財政支援の必要性を訴える。

コロナ禍で迎える3度目の冬は、これまでの教訓を生かし、必要とする人たちに医療が行き届かない事態を避けることができるのか。1日75万人というセンセーショナルな数字を想定として掲げた以上、政府には医療の逼迫を防ぐための徹底した対策が求められる。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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