ウクライナ居住不能にするロシアの「兵糧攻め」 インフラ大量破壊で「耐えられない冬」に

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首都キーウ(キエフ)の一部地域に対しては、17日の空爆で濁った水道水を飲まないようにとの警告が当局から発せられた。キーウの別の地区では、水も電気も利用できなくなった住民に食事を提供する野外炊飯場が設置された。店先には新鮮な水でボトルを満たそうとする人々の列ができた。電力会社からは、設備の修理は進んでいるが、停電は今後も続くという告知があった。

北部の都市チェルニヒウ郊外のある地区では、節電のために午前9時から午後6時まで電気の供給が止まる日が何日も連続で続いたと住民は語る。市内のレストランではメニューがかろうじて読めるかどうかという薄暗い照明について、不要な照明を消すという当局の要請だとして給仕係が客に理解を求める場面もあった。

中部の都市ジトーミルでは、動力源の電力がなくなったため路面電車が止まり、市長によると、病院は非常用の補助発電機に電力を頼るようになっている。高層ビルでは、水圧が弱くなったため低層階しか水が出ないところもあった。

ロシア軍はウクライナの東部と南部で苦戦を強いられるなか、前線から遠く離れた都市を攻撃する作戦を広げてきている。ウクライナ側は9月初めから反攻に転じており、今年ロシアに奪われた領土の奪還が進んでいるが、そうした動きは足元では鈍っているようだ。

ロシアの「残虐」総司令官が考えていること

エストニアのハンノ・ペブクル国防相は18日、ロシア軍のウクライナ侵攻総司令官セルゲイ・スロビキン将軍が、残虐さで知られる自らの悪名をさらにとどろかせようと、民間人や重要インフラに対するミサイルや無人機攻撃を拡大してくる可能性があると述べた。

「彼(スロビキン氏)にとっては民間人の命など、なきに等しい」。ペブクル氏はアメリカのワシントンでロイド・オースティン国防長官と会談した後、記者団にこう語った。「彼は民間人に対し、この種の行動を続けることをためらわない。目的は明らかだ。その目的とは、ウクライナ国民を絶え間ない恐怖と脅威の下に置くことだ」

ロシア政府はウクライナの都市への砲撃を、クリミアとその東のロシア領とを結ぶ唯一の橋に大きな損傷を与えた8日の攻撃に対する報復だとしている。この橋はウラジーミル・プーチン大統領の肝いりで建設されたもので、ウクライナ南部のロシア軍に対する重要な補給線となっている。

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