慢性炎症は「静かなる殺人者」、怖さの根本要因 医師が指摘!のどや歯ぐきが腫れていたら危ない
もう1つ、慢性炎症のこわいところは、炎症が飛び火して、さらに別の病気を引き起こすところです。
炎症が起こると、「サイトカイン」と言われる炎症物質がつくられるようになります。この物質は、体に異物が侵入してきたことを知らせて、炎症を引き起こすはたらきがあります。免疫機能に必要な物質なのですが、炎症が長引くとつくられすぎてしまい、さらに炎症を促進します。
さらに、サイトカインはそこだけにとどまらず、炎症でダメージを受けた血管に入り込んで、全身のさまざまな病気のもととなることがあるのです。
わかりやすいのが歯周病です。
歯周病菌に感染して慢性炎症が起きて歯周病になると、炎症物質が血液にのって全身に運ばれて、さまざまな病気を引き起こすことが知られています。その病気の1つが冒頭でもご紹介した関節リウマチですが、ほかにも有名なものとして糖尿病があります。サイトカインは血糖値を下げるはたらきがあるインスリンというホルモンのはたらきを悪くします。そのため、血糖値が高くなりやすくなるのです。
反対に、糖尿病の患者さんが歯周病を治療すると、血糖値のコントロールがうまくいくという研究報告も多くあります。
口の中の慢性炎症が全身の病気につながる
そして、認知症も歯周病と関係していると言われる病気です。アルツハイマー型認知症は、アミロイドβというたんぱく質が脳に蓄積されることで発症すると考えられていますが、なんと歯周病によって口の中に増えたサイトカインが脳に運ばれると、このアミロイドβが脳に増えることが報告されています。
マウスを使った九州大学の実験では、人間の年齢に換算すると40〜60代のマウスに3週間、歯周病菌を投与したところ、脳の中のアミロイドβが10倍に増え、記憶力が低下したそうです。
このほか、歯周病の慢性炎症が飛び火することでリスクが高まる病気には、動脈硬化や脳梗塞・心筋梗塞、肺炎などがあります。いずれも慢性炎症によって起こる病気です。
口の中で起こった慢性炎症が、体のいろいろな場所へと広がって、現代最もこわいと思われている病気の原因になっていることがよくわかりますね。
ここまで慢性炎症によって起こる病気をとりあげてきましたが、これらはあくまでも一部の事例です。慢性炎症は、すべての内臓、器官、体のいたるところで起きています。
さらに炎症が全身に広がって、体の機能をどんどん低下させていくのです。
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