日本はむしろ物価高から取り残された異様な状態 世界の潮流との差で犠牲になっている人がいる

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ところで、「最下位」で何がまずいのでしょうか。GDP成長率のような数値であれば高いほうがよいに決まっているけれど、インフレ率は高いほうが困るのだから、最下位でよいじゃないかと思う方もいると思います。ベネズエラやスーダンはもちろんのこと、米国や欧州諸国でもインフレ率が高すぎることが問題になっているのであり、だからこそ、これらの国では中央銀行や政府がインフレ率を下げる施策を懸命に打ち出しているのです。

しかし、高すぎるインフレ率が望ましくないのと同様に、低すぎるインフレ率も困りものです。多くの中央銀行が採用しているインフレターゲティングという制度においてその目標値を「2%」としているのには、それより上がまずいというだけでなく、それより「下」も望ましくないという意味もあるのです。

それにしても2%というのは不思議な数字です。物価は上がりもせず下がりもせず安定しているのがいちばんというのが健全な常識だとすれば、目標は「ゼロ%」になるはずです。なぜゼロではなく2なのでしょうか。

「2」という数字の根拠を説明するのは本書の域を超えるので立ち入ることはしませんが、なぜ「ゼロ」ではなく「ゼロを超える」数値なのかというのは、本書の主題に深くかかわる点なので、要点だけ説明しておくことにします。

金利引き下げの限界

2022年の米欧のように、中央銀行はインフレが起こると金利を引き上げることで対応します。容易に想像できるように、インフレが激しければその分、金利の引き上げ幅も大きくなります。しかも都合のよいことに、金利は青天井でどこまでも引き上げることができます。ですから、どんなに激しいインフレでも、中央銀行は金利引き上げで十分対応可能なのです。

ところが、インフレ率がゼロを下まわる場合、つまりデフレのときは事情が大きく異なります。インフレで金利を上げるのとは反対に、デフレでは金利を下げるわけですが、どこまでも下げられるかと言うと、そんなことはありません。「マイナス金利」というのを聞いたことがあるぞ、ゼロを下まわる金利も可能じゃないか、というように思われる方もいるかもしれません。

たしかに、ゼロを下まわる水準まで金利を下げることはできなくはないのですが、どこまでも下げていけるかと言うと決してそうではなく、金利には下限というものがあるのです。どこが下限かを数字で表すのは難しいですが、研究者のあいだではマイナス2%あたりが下限と理解されています。

デフレが起これば、中央銀行は金利を下げます。激しいデフレであればその分、金利の下げ幅も大きくなります。ここまではインフレのときと同じです。しかし金利には下限があるため、デフレがさらに激しくなると、中央銀行はもう対応できなくなるというポイントに、いつかは突き当たります。

つまり、中央銀行はインフレには強いがデフレに対してはそれほどでもないということです。そうであるなら、平時のインフレ率は「ゼロ」ではなく「ゼロを超える」値にしておくことで、デフレへの備えを厚くするのが賢明ということになります。先進各国の中央銀行がインフレターゲティングの目標値を「ゼロ」ではなく「ゼロを超える」値に設定している理由はここにあります。

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