日本はむしろ物価高から取り残された異様な状態 世界の潮流との差で犠牲になっている人がいる

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「最下位」で何がまずいのかに話を戻しましょう。日本の数字はゼロを超えているので、その意味では最下位でも何の問題もありません。むしろ、米欧のようにゼロを大きく超えてしまうことと比べれば、ゼロを少し超える程度であるほうがずっとましです。最下位だからといって肩を落とす必要はありません。

しかしながら、ゼロを超えるか否かということとは別に、消費者物価の上昇率が長いあいだ最下位あたりにあるということに、まったく問題がないとは言えません。消費者物価の水準の格差が日本とその他の国々とで年々拡大し、そしてそれが積もり積もっていくと、日本の物価が海外の物価に比べて3割も4割も安いという、大きな内外価格差が生まれてしまうからです。

輸入品の値上げが進まない

次に、なぜ日本のインフレ率が最下位なのかを考えてみましょう。とくにパンデミック2年目から3年目になって、日本が最下位となった理由は何でしょうか。

下の図は、2022年の世界各国について、輸入品の物価の上がり方とCPI(消費者物価指数)の上昇率との関係が、どのようになっているかを表したものです。十字マークの一つひとつが、調査対象国を示していて、横軸には2022年1月から4月までの輸入物価インフレ率を、縦軸にはCPIインフレ率(IMFによる2022年の予測値)をとっています。

「輸入物価」とは、輸入品が各国に到着した段階の価格のことで、その国の通貨で表示されています。日本の場合は、原油などのエネルギーや小麦等の穀物などが大きな割合を占めています。

図の点の散らばりを見ると、大まかに言って、左下から右上の方向に点が並ぶ傾向があります。つまり、輸入物価インフレ率の高い国ほどCPIインフレ率が高くなる傾向があるということです。それが何を意味するのかと言うと、2022年のインフレは、各国の国内的な要因によって起こったというよりも、特定のいくつかの国のインフレが貿易を通じてその他の国に飛び火するというかたちで起こったということです。

インフレの震源地は、ひとつは米国や英国などで、これらの国々では、パンデミックの後遺症として人手不足やモノへの需要シフトが起こりました。もうひとつの震源地は、ウクライナ・ロシアとその近隣の欧州諸国で、戦争と経済制裁の影響で物価が上昇しています。この2つの震源地から全世界にインフレがばらまかれたのです。

では、日本はこの図のどこに位置しているでしょうか。それは、○囲みで示しているところです。一見してわかるとおり、多くの点が集まるところとは離れています。つまり、日本は世界の傾向から逸脱しているということです。

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