日本はむしろ物価高から取り残された異様な状態 世界の潮流との差で犠牲になっている人がいる
このデータを見る限り、2022年現在の日本のインフレは、物価高が喫緊の課題であるとメディアが謳うのとは裏腹に、少なくとも他国との比較においては圧倒的に低いインフレ率であり、危険な水準とは言い難い状況であることがわかります。
むしろ、日本が世界各国から「取り残されている」、異様な状態にあると私はみています。なお、IMFの予測は2022年4月時点のもので、日本のインフレ率が4月以降、加速したことは反映されていません。しかし仮にそれを勘案したとしても、最下位またはブービーで、「取り残されている」ことに変わりはありません。
実は「取り残されている」のは今に始まった話ではありません。下の図は、日本・米国・韓国・ベネズエラの各国について、2000年以降のインフレ率ランキングがどのように推移してきたかをチャートにしたものです。なお、先ほどの図は予測値でしたが、こちらはCPI(消費者物価指数)インフレ率の実績値を用いています。
一貫して上位を維持しているのがベネズエラで、中間で上下しているのが、日本、米国、韓国です。底を這うようになっている点線は、各年の最下位国の順位を示しています(年によって調査対象国の数が変わるため、最下位国の順位が変動しています)。
日本の位置を見ると、2000年からほぼずっと最下位近くで推移してきたことがわかります。例外は2014年で、このときに大きく順位を上げていますが、これは消費税率の引き上げが行われた影響によるもので、実力で順位を上げたとは言えません。
そして注目すべきは、2021年以降、日本がふたたび最下位になっていることです。つまり日本は、パンデミック後の世界的なインフレが発生する前も後も、相対的にはあまり物価が上がらない国だったということがわかります。
海外の雑誌などを見ると、東アジアは総じてインフレ率が低く、その中でも日本はとくに低くて、米欧のようなインフレ問題は存在しないという書き方をしているものもあるほどです。日本に値上げの波が来ているのは事実であり、そのこと自体を否定するつもりは毛頭ありません。ですが、日本語メディアの報道と海外の視線には大きな隔たりがあることは、認識しておいたほうがよいでしょう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら