新幹線の恩恵ある?長崎を走る「島原鉄道」の現実 私鉄として地域発展を支えた自負を持つが…
「サイクリング」にも注目しているという。
島原鉄道の2008年に廃止された区間はサイクリングロードとして整備されており、フェリーで渡った先の熊本・天草でも、サイクリングロードの整備が進んでいる。島原、天草と広範囲に延びたサイクリングコースは、1日では回れない。必然的に宿泊客が増えていく。自転車であれば、広い駐車場は不要。環境にも優しい。
「人数は少ないかもしれないが、そういう方に連泊してもらえれば、延べ宿泊数はそれなりの数になる。施設や店舗の整備や稼働率を考えると、土休日だけ何千人と増えるより、100人、200人程度の数でも毎日来てもらえるほうがありがたい」(永井社長)
2022年3月からは自転車をそのまま載せられる「サイクルトレイン」の運行を開始。このサイクルトレイン専用チケットでは、島原半島と天草を結ぶフェリーにも乗船できるほか、渡った先の天草エリアでも特典を受けられる。
島原鉄道では今後、自転車を送って受け取れる場所、地元の自転車店とコラボしたメンテナンススポット、情報拠点・休憩場所として、駅を整備していけないかと考えているそうだ。すでに自転車を駅留めで送ることは、事前に予約すれば可能とのこと。
また島原鉄道は2023年1月より、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」のルートになる。JR九州と島原鉄道の線路は諫早駅でつながっているが、「ななつ星in九州」の車両が島原鉄道線を走ることは保安装置の違いなどから難しいため、島原鉄道の車両へ乗車する形だ。
「色々な旅の形を増やさないといけない。どういう形でも島原へ行きやすいようにしたい」と、「つなぎ役」である島原鉄道の永井社長は言う。
これでいいのか新幹線開業
島原鉄道にとって西九州新幹線の開通は部分開業は懸念材料だとしても、基本的にはプラスの話だ。「つなぐ」ことができる、観光資源が存在するという「地の利」も、島原鉄道には存在する。
ただ、それを生かして地域の足を守っていこうという戦略は描けても、少子高齢化、人口減少、学生減少という地域の日常があり、JRなら廃止も検討されかねない「1000人未満」という輸送密度なのが、島原鉄道の現実だ。そこにコロナ禍である。
永井社長は提起する。
「地方の公共交通が抱えている問題が、コロナ禍で一挙に表面化した。この機会に、地方の公共交通をどうするのかという議論を、中央にしてもらいたい。新幹線が開通した長崎で、その二次交通は壊滅的。それでよいのか」
島原鉄道は地方自治体が経営に関わる第三セクター鉄道ではなく、私鉄である。「我々は民間で114年やって来て、鉄道で沿線が栄えたという自負を持っている。その役割が終わったとは思っていない」と、永井社長は力を込めた。
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