新幹線の恩恵ある?長崎を走る「島原鉄道」の現実 私鉄として地域発展を支えた自負を持つが…

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島原鉄道では、西九州新幹線などで島原半島に来て、雲仙の温泉で宿泊してもらい、そこから熊本に渡って九州新幹線で関西方面まで乗り換えなしで帰る、といった周遊旅行の提案を以前から進めているという。2019年には有明海の対岸、熊本市に拠点を置く九州産交グループとの包括的業務提携を締結した。

確かに4回の乗り換えは面倒であるが、逆に乗り継いでの周遊旅行と考えれば、西九州新幹線の武雄温泉駅で行う新幹線「かもめ」と在来線「リレーかもめ」の対面乗り換えは“旅のアトラクション”になる。

トラブルもあった大三東駅

より誘引力のある結節点、つなぎ役になるべく、島原鉄道自体の魅力を高める取り組みも行われている。2019年には、観光列車「しまてつカフェトレイン」の定期運行が始まった。

「お金がないので、有名デザイナーに頼むことはできないなか、知恵を出し合いながら観光列車を作った。車内で提供するメニューもそうだが、列車自体が手作り。そうしたところも、お客様に楽しんでいただけるのではないか。料金もその分、安めになっている」(永井社長)

運行開始当初は厳しい状況が続いたそうだが、2019年度に56便を運行して1340人だった乗客は、2022年度は約70便の運行で約2180人に増加(4〜9月の実績)。地道に運行、PRをしてきた結果、バスツアー客専用の「しまてつカフェトレイン」を運転する日も多くなり、最近では毎日のように走っているという。

筆者が島原鉄道へ取材に訪れた日も、有明海対岸の熊本から来た九州産交バスのツアー客専用で「しまてつカフェトレイン」が走っていた。「つなぐ」という島原鉄道の戦略の成果が、出てきているのかもしれない。

テレビCMに登場した大三東駅も、以前は知る人ぞ知る駅だったそうだ。しかし、「しまてつカフェトレイン」をその駅で長時間停車させ、ホームで「幸せの黄色いハンカチ」を結ぶなどのイベントをするようにしてからメディアで取りあげられる機会が増え、「インスタ映え」のトレンドもあって、知名度が高まっていったという。

ただ、自家用車で大三東駅へ直接向かう人も多く、駐車などに関して、駅周辺で問題になったことがあった。そこで島原鉄道は、島原駅の駐車場に自動車を止めて、列車で片道10分の大三東駅まで往復できるお得なきっぷ「往みさきっぷ」を発売。自動車で来ても、あわせて列車の旅を楽しんでくれる乗客が増えてきているそうだ。

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