新幹線の恩恵ある?長崎を走る「島原鉄道」の現実 私鉄として地域発展を支えた自負を持つが…

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少子高齢化、人口減少、学生の減少といった全国の地方鉄道が抱えている課題は、島原鉄道でも同様である。

島原鉄道では2008年、島原外港(現・島原港)―加津佐間35.3kmの鉄道が廃止になった。そして経営状況の悪化から2018年に地域経済活性化支援機構による再生支援を受け、長崎バスグループの傘下に入った。

2022年7月、国土交通省の有識者検討会がJRで輸送密度が1000人未満の路線、区間についてはバスなどへの転換も含め協議をしていくべき、という提言をまとめている。「今後も高齢者が増え、全体人口が減っていくなか、島原鉄道線の現在の輸送密度は1000人未満。JRだったら廃止になりかねない」と、永井社長は危機感をあらわにする。

西九州新幹線が開業した。永井社長は「これをチャンスとして生かしていく」としつつも、「効果にやや懐疑的な部分があることは否めない」と話す。部分開業で、関西方面からは博多駅、武雄温泉駅と片道2回も乗り換えが必要になるためだ。

世界遺産を構成する原城についても、登録後は観光客が爆発的に増えたものの、駐車場や飲食施設などが整備されておらず、一過性で終わったという。世界遺産であるため、そうした整備が難しいという背景もあるそうだ。

とはいえ地元の利用者を増やすことは、少子高齢化、人口減少のなか容易ではない。線路を維持するためには、外部からどう誘客するかが大きなポイントになる。

島原鉄道でも「外貨を稼ぐ」ため、取り組みを進めているという。

長崎は「行き止まり」ではない

一般的に「長崎」というと、西の果ての行き止まりのようなイメージがあるかもしれないが、「実はそうではない」と永井社長は言う。

島原港から熊本港まで有明海を船で行けば最短30分程度。島原市からは長崎市よりも熊本市のほうが近い。遊びに行くときは規模が大きい熊本や福岡に出る場合が多いそうだ。

また島原港は、三池港(福岡県大牟田市)とも航路で結ばれているほか、島原半島には多比良港(長崎県雲仙市)と長州港(熊本県長洲町)を結ぶ航路、口之津港(長崎県南島原市)と鬼池港(熊本県天草市)を結ぶ航路もある。

「島原半島を中心にして地図を見ると、長崎市方面、天草方面、熊本市方面、福岡県方面の結節点に島原半島が存在する。その結節点にいる我々が各方面をつなぐことによって、外からの人の流れを生み出し、地域の足を守っていく」(永井社長)

島原半島は地理的な結節点であるうえ、世界遺産や雲仙といった観光資源が存在し、誘引力を持つ場所でもある。そこで地域や人を「つないで、つないで、つなぎまくる」ことによって地域の足を守っていくというのが、島原鉄道の戦略だ。

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