「自動運転」ブーム終焉か? 最終準備段階か? 最前線での取材でわかった自動運転のこれから

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トヨタは、ダイナミックマップを使うレベル2を量産している。例えば、今回試乗したトヨタの燃料電池車「MIRAI」では、首都高速での渋滞中から通常走行時まで両手をハンドルから離しての走行が認められている「アドバンスド・ドライブ」がある。

その精度や使い勝手は、1年前に試乗した初期モデルと比べてかなり改良されていることを実感した。法的な区分けとしてレベル2とレベル3には大きな違いがあるものの、こうした実走行での体験からは、運転者としてはその差をあまり意識しない。

こうしたオーナーカーの自動運転レベルの進捗について、経済産業省の自動走行ビジネス検討会が2022年4月28日に公表した「自動走行ビジネス検討会報告書 version 6.0」では、「オーナーカーにおける目指すべき将来像の実現に向けて」として図表を示している。

日本自動車研究所(JARI)の展示ブース(筆者撮影)

レベル5に言及されなくなった理由

それによると、2022年時点はレベル1からレベル2の普及期、その後2025年頃はレベル2、レベル3の導入促進期とするも、2030年以降になってもレベル4以上へのステップアップは見込まず、「レベル2からレベル3のさらなる普及」という表現にとどめている。

一方で、サービスカーについては、2022年時点をすでにレベル4導入期としている。そして、2025年に全国40カ所を目指す導入促進期、2030年以降にレベル4の本格普及という目標設定となっている。

このversion6.0より前の資料には、サービスカーとオーナーカーが技術的および法的な連携をしながら、それぞれが自動レベルと自動運転を行う環境や条件を広げていき、最終的にはサービスカーとオーナーカーで完全自動運転であるレベル5を目指すという全体イメージが提示されてきた。それが大きく書き換えられたというわけだ。

その背景には、SIP-adusの9年間を経て、自動運転の事業性や社会受容性を鑑み、国として自動運転の普及に向けた「現実解」を考える姿勢を重視したことがあるだろう。

今後も「自動運転の行方」という観点でSIP-adusの実績に対するさらなる深掘りや、日本国内での自動運転実用化の現場から、「現実解」を念頭に置いたレポートをお届けしたい。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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