「梅毒」感染者数が過去最多になった3つの理由 感染者の約3分の1は女性、圧倒的に20代が多い
2つ目は、別の記事(「梅毒」で関節痛や頭痛、視力低下、脱毛も! 感染者急増の背景に「医師でも診断が難しい」)で解説したように、梅毒には典型的でない症状が多いのですが、ネットで典型的な症状を調べて『自分はこれではないから関係ない』と自己判断してしまうことです」
3つ目は、医師から処方された薬を患者が用法・用量を順守して服用する「服薬コンプライアンス」が守られず、治療を完了できない人がいることだ。治療で最も多く使われているペニシリン系抗生物質の飲み薬は、28日間連続、朝昼晩の服用をしなければいけないという。
「仕事をしている若い世代が、服用を毎日、1日3回続けるのはなかなか難しいですよね。しかも梅毒はいったん症状が落ち着くことがあるため、なんとなく治った気がして『もう大丈夫だろう』と服薬をやめてしまい、人にうつしてしまう患者さんが少なくありません」
治療は、症状がなくなり、血清抗体価が下がって正常化すれば「治癒」となるが、薬の服用をやめたり忘れたりすると、完全に治癒していない可能性がある。細菌がどんどん増え、血清抗体価が逆戻りすれば、また28日間服用する必要があるという。
脳や心臓などの中枢神経系にまで感染
「梅毒に関する正しい知識がないからこそ、増えてしまっている状況も考えられます。このまま増えると数年後に、症状はないものの血清抗体価が下がっていない潜伏梅毒の人が、脳や心臓などの中枢神経系にまで感染が広がり、命にかかわる状況になりえます。そういう人がどんどん増える可能性があり、注意すべき状況です」