北朝鮮「ロシアに兵器は売らない」の本当の意味 ウクライナ戦争で変化するロシアと北朝鮮

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また、「安保理で北朝鮮の企業や個人の制裁対象指定が議論された際、ロシアはもっぱら中国に歩調を合わせたものの、北朝鮮をひたすら守ろうとしたといったことはほとんどなかった」と古川氏は付け加える。

しかし、「ロシアはそのようなタガが外れたのかもしれない」(古川氏)。ロシアが率先して北朝鮮を擁護する姿勢を見せるようになったのは、現在のロシアにとって北朝鮮が、アメリカを威嚇する有力な材料の一つになっているということだ。

核兵器・ミサイルの開発を急ぐ北朝鮮との関係強化といった「北朝鮮カード」をちらつかせながら、西側と対峙していく可能性が高まっている。

北朝鮮とロシアの軍事的協力を注視すべき

北朝鮮は現在、関係途絶とも言える対米関係を好転させようとはしていない。しかし、いたずらに挑発する意図はなく、今回の談話発表はその延長線上にあるのだろう。とはいえ、自力更生をスローガンに「自衛のための軍事力向上」を掲げる北朝鮮としては、ロシアとの軍事的協力を深めるのは国益にかなっている。

ロシアもウクライナにおける戦局が悪化し、アメリカなどの圧力がより高まった際には、北朝鮮に核・最新兵器開発などの協力を強めるというのも選択肢の一つとなる。北朝鮮ともロシアとも近い日本は、ウクライナ戦争の推移に注視すると同時に、北朝鮮との安保環境もより注意深く見ていく必要がある。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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