北朝鮮「ロシアに兵器は売らない」の本当の意味 ウクライナ戦争で変化するロシアと北朝鮮

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ロシアは1991年12月のソ連崩壊と同時に、「北朝鮮とは軍事協力を行わない」という方針を決めたが、実際にはそれまでの援助や支援により、北朝鮮人民軍の装備はほとんどが旧ソ連製で構成されてきた。核やミサイル開発のための技術も、大部分は旧ソ連からの技術を基にしたものといえる。

北朝鮮はかつて、ソ連軍のAKカラシニコフ小銃などの小火器を製造したことがあるし、現在開発中の弾道ミサイルや短距離ミサイルは、ソ連製の技術をまねて開発したものだ。核開発も、その原点は1960年代に旧ソ連の原子力科学者などを北朝鮮に招き研修を受け、また小型実験炉も旧ソ連が提供したのがその嚆矢だ。

この十数年、北朝鮮はミサイルやほかの簡単な兵器について製造・輸出することで外貨稼ぎをするようになった。古川氏は、「ロシアの兵器を基にした北朝鮮製兵器はアフリカや中東など、ロシア製が使われている地域に輸出されてきた」と指摘する。そのため、もし現在のロシア軍が兵器の調達に困っているのであれば、北朝鮮も当然、その調達先の一つとなる可能性はあるだろう。

国家レベルでの協力を鮮明に

ただ、最近になって北朝鮮とロシアとの関係が変化していることに注目する必要がある。例えば2022年8月15日、朝鮮中央通信はプーチン大統領が北朝鮮との包括的かつ建設的な2国間関係を拡大すると約束した、と報道した。日本の敗戦が決まった8月15日は、北朝鮮にとって「祖国解放記念日」。この日、プーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記は書簡を交わし、金総書記は「両国の同志的友情はより強固なものになるだろう」と述べたという。

2016年に北朝鮮東部・元山市で開催されたエアーショーで着陸する旧ソ連製のミグ21戦闘機(写真・福田恵介)

書簡で金総書記は「戦略的かつ戦術的な協力や支援と連帯は、敵対勢力の軍事的脅威と挑発をくじくための共同戦線において、新たな高い段階に至っている」と指摘した。敵対勢力とは、アメリカや日本、韓国などの同盟国のことだ。

またウクライナとロシアが戦火を交えているウクライナ東部の2つの州を、ロシアが「ルガンスク人民共和国」「ドネツク人民共和国」として独立を承認した際、北朝鮮は両国の独立を承認している(9月30日にプーチン大統領は両国の編入を宣言した)。

前出の古川氏は、「ロシアはこれまで北朝鮮の制裁違反について中国ほど強くかばうことはあまりなかったし、ましてや両国間の軍事的協力関係を匂わす言及もなかった。ところが最近は両国間の安保協力や両軍同士の協力関係にまで堂々と言及するようになった」と、その変化を指摘する。

古川氏は国連安保理での経験を基に、「以前、ロシア人やロシア企業による制裁違反が指摘されると、ロシア政府は安保理でその指摘に強く反発した。それを指摘した国連専門家パネルや欧米の政府を激しく攻撃したが、これは北朝鮮よりもむしろ自国の国家的尊厳を守るためだった」と解説する。

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