調剤大手さくら薬局、調剤報酬に生じた「疑惑」 経営再建中に調剤報酬を高く請求している疑い

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つまり、2社の薬局をM社傘下にすることは形式的なもので、さくら薬局グループが実質的に支配をしていくことを自ら認めているのだ。そしてB氏は後日「(M社の傘下に入ったことで)調剤基本料は高い算定がとれる」と明言している。

ただし、さくら薬局からの「グループ外し」が高い基本料を得るためだとしても、疑問は残る。1000店舗を超えるさくら薬局チェーンで、7店舗をSPC傘下にしても、たかがしれている。これについて、業界関係者は「グループ外しの狙いは、高い調剤報酬を得ることで店舗の収益を改善させた後、他社に少しでも高く売却して資金を得ることにあるのでは」と推測する。

「同一グループ」の定義は守られるか

現時点で、地元の厚生局には再調査の動きなどはない。しかし、子会社を資本関係のないSPCに移し、今までより高い調剤報酬を得るという請求方法がまかり通れば、「同一グループ」の定義は骨抜きにされてしまう。

調剤薬局は営利を追求する組織であると同時に、「保険医療機関」だ。保健医療機関には、健康保険事業の健全な運営を確保し、費用の請求に関する手続きを適正に行う義務がある。

さくら薬局グループには自社の再建策だけではなく、調剤報酬制度と真摯に向き合う姿勢が求められている。

星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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