今回の報道では、かっぱ寿司の田邊社長が入手したのは「日次の売り上げデータや材料の仕入れ価格」だったという。日次の売り上げデータであれば、それを入手しても、だからといって模倣するのは難しいと思うかもしれない。たださまざまな可能性はある。
・ 売り上げデータ:はま寿司ではさまざまなキャンペーンを行っている。そのキャンペーンでどれほどの売り上げ効果があったのか。可能性としては、キャンペーンごとの売り上げ反映をデータ入手によって検証できたかもしれない。
・ 仕入れデータ:キャンペーンごとに特定材料の仕入れ価格を確認できたかもしれない。また、通常に仕入れている食材についても取引先の提供価格がわかり、それを交渉に活用できたかもしれない。
同業他社のヘッドハンティングに注意
そもそも、データが流出してしまったはま寿司側のセキュリティはどうだったのだろう。これは、はま寿司を責めるわけではない。ただ事実として流出してしまった企業では、簡単に情報にアクセスできるとか、容易に情報をダウンロードできるとかいった状況であれば改善が必要だろう
カッパ・クリエイトも同業他社からのヘッドハンティングに注意する必要があったのではないか。同業他社からの転籍であれば、少なくとも頭の中には最新の経営情報や経営戦略が残っている。ここに不正競争防止法違反を犯してしまうようなリスクはないだろうか。また、ライバル他社から不正に得た情報を、自社の利益に使うような行為を防ぐ方策は完備されているだろうか
そして私が最も懸念するのは次の点だ。
取締役レベルであっても、一般社員レベルであっても、「なんら罪の意識なし」に競合他社からの転職者が情報をもってくる可能性がある。実際にメディアからの質問に、かっぱ寿司・田邊社長は情報入手についてさほど違法性を感じていなかったと正直に吐露していた。これを防ぐコンプライアンス違反研修は行われているのだろうか。
私は前述したアメリカの反トラスト法を、やや極端に感じていた。だが私が間違っていたようだ。日本でも、同業他社や前勤務先からの情報入手は厳しく罰せられる。実際には、さほど役に立たなかった情報であっても、市場を歪める“可能性”のある行為については厳罰になるのだ。
おそらく人材の流動化が進んでいくだろうと思われる日本。かっぱ寿司の田邊社長逮捕が投げかけた課題は、個別企業を超えてはるかに大きい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら