福島第一原発の危機、政府・東電への疑念が晴れないこれだけの要因

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そして、1号機のような垂直的で上方に生じるのは、「縦向きに長い圧力を持つ」圧力容器のふたが飛ばないと、直後にソニックブームが起きるほどの爆発は起きないという指摘がある。

原子核工学が専門で立命館グローバル・イノベーション研究機構の亀井敬史研究員は、「圧力容器内の圧力上昇と蒸気を抜く作業が追いつかなかったのだろう」と指摘する。冷却水を送り込むためのディーゼル発電機がだめ、別途発電機を用意してから爆発まで約3時間。これだけあれば、圧力容器内の圧力上昇は十分に進むと言う。

福島原発で使われている原子炉は「沸騰水型」(BWR)で、内部の圧力は70気圧が限度。これを超えると圧力容器は破壊される。映像を見る限り「このような空気の圧縮は、水素が漏れて空気と触れて爆発したというような“全方向的な”爆発では生じない。まっすぐ、上に抜けるような空気の動きは圧力容器上部の破壊では」と亀井氏は懸念する。

建屋が破壊されるほどの爆発がわかっていながら、内部の映像がわからず、それを政府がきちんと把握しているのかどうか。放射能で近づけないのか、あるいは隠しているのか。

枝野官房長官は「できるだけ早い情報公開」を口にしているが、肝心な部分が隠されているのではという懸念は、早いだけでは消えない。

また、東電は危機対処のマニュアルをきちんと公開し、「この状態ではこうする、ダメならこうやる」と、状況を小間切れに出すことより、全体の危機管理ラインを出したらどうだろうか。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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