売れない商品作る人が見逃しがちな4つの注意点 感情に訴えれば商品が爆発的に売れる訳ではない

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▼注意点4 ユーザーを操ろうとしない

「本能に刺さる商品を作る」と言われた際に考えがちなのが、「できるだけ煽情的なコンテンツで口コミを増やせばいいのでは?」といった発想です。暴力や性的なイメージが強い広告、射幸心を煽るゲームアプリ、不謹慎な発言で他者を煽るニュースなど、人間の感情に火が着きやすい要素を盛り込み、ユーザーの行動を操ろうと考えるわけです。

確かに、ユーザーの心理をコントロールする手法が主流だった時代もかつてはありました。「広報の父」として知られるエドワード・バーネイズは、1920年代に「お菓子は太るがタバコは痩せる」と医者に発言させて売上を伸ばしたり、「ニューヨーク・タイムズ」を使って共産主義の恐怖を煽ったりといった手法を展開。そのプロセスで生まれた大衆扇動の技法は、現代でも使われる広告宣伝の基礎となりました。

しかし、このような手法は、幸か不幸か世界で急速に勢いを失いつつあります。いくつか統計データを見てみましょう。

ブランド支持の最重要要素は「信頼性」

12のグローバル企業を対象にしたBCWの2014年調査によると、全企業における顧客の91%が「サービスについての誠実さが最も重要だ」と評価。一方で、サービスの有用性とブランドの人気はそれぞれ61%と39%に留まりました。

Stacklaが発表した「2017年の消費者レポート」では、ミレニアム世代の回答者の90%が、支持するブランドを決める際に最も重要な要素は「信頼性」であると答えました。

/amoネットワークが世界22カ国の525社を調べたところ、日本の上場企業の大半が「誠実さ」を最重要の価値観として挙げ、その数は「革新性」を抜いて第1位でした。

これらのデータで言う「誠実さ」とは、「商品について嘘をつかない」のはもちろん、「過激なビジュアルやメッセージでいたずらにユーザーを煽らない」や「社会的な倫理にもとづいた行動を取る」といった要素を含みます。現代の世界では、若い消費者ほど商売に「誠実さ」を求め、それに応える企業が増えつつあるようです。

世界的に「誠実さ」が重要になった理由には諸説がありますが、プリンストン大学の社会心理学者スーザン・T・フィスクは、世界の消費者研究をふまえたうえで次のように指摘します。

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「現代はテクノロジーと情報の増加がすさまじく、それゆえに顧客はブランドや企業の『誠実さ』や『能力』を瞬時に判断する力を備えた。その力は、今後数十年にわたって増大し続けるだろう」

企業が消費者をコントロールできたのは、情報の少なさを武器にできた大昔の話。あらゆる情報が瞬時に流通する現代では、人間の感情を操るような企みはすぐに白日のもとにさらされます。その結果、現代のユーザーは、かつてないほど誠実さを求めるようになったわけです。

かつての広告が私たちの「決する本能」を侵害していたことに多くの人が気づき、「安らぐ本能」が大きく活性化された状態と言えるでしょう。すべてがつながる世界では、 「誠実さ」こそが最大の武器 になるのです。

鈴木 祐 サイエンスライター

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すずき ゆう / Yu Suzuki

1976年生まれ、慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。近年はヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。著書に『最高の体調』(クロスメディア・パブリッシング)、『ヤバい集中力』(SBクリエイティブ)他多数。

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