放射能は300年消えず、「食品汚染の今」 原発事故から4年、あの問題はどうなった?
放射性物質の半減期を踏まえると、この4年間で、空間線量は56%減少した。しかし、いまだに食べ物からは、東日本の広い範囲で基準値を超える値が検出されている。厚生労働省の集計では、昨年4月から今年1月の間に東日本17都県で約27万件を検査。基準値を超えたのは、0.17%の456件だった。
安全・安心への不信感
左の表は、そのうち東北地方を除いた主な品目を一覧にしたものだ。同じ品目の場合は、最も高い数値を記載した。大半は、ジビエや野生のキノコ、淡水魚だ。東北地方は、スズキやカレイなど海水魚に基準値超えが出ているが、それ以外はほぼ同じ傾向にある。最も高い値は、古くから食用とされるキノコのチャナメツムタケで、基準値の15倍となる1500ベクレルを検出。昨年10月に長野県佐久市の山林で採取された。
地域別に見ると、原発に近い栃木県や群馬県がやはり多い。だが、昨年10月には、原発から300キロ以上離れた静岡県富士市で、キノコのハナイグチから360ベクレルの値のセシウムが検出された。今なお、原発から遠く離れた場所でも基準値超えを検出される産品があるのは、なぜなのか。
独立行政法人「森林総合研究所」(茨城県つくば市)のきのこ・微生物研究領域長の根田(ねだ)仁さんは、こう説明する。
「山林の土壌はセシウムを吸着・保持する性質があるため、森林内に分布する放射性セシウムのうち森林外へ流出する量はわずかです。自然の減衰をのぞけば森林内にとどまっている。その上、キノコはセシウムを吸収しやすい性質をもっているためと考えられます」
そして、そのキノコを食べたシカやクマ、イノシシなどが汚染される……。基準値超えの品目は、出荷も販売もされないことになっている。しかし、いくら「安全」と言われても「納得できない」という人は少なくない。特に、行政が発信する「安全・安心」への不信感は根強い。
原発事故直後から、自社で扱う食べ物に含まれる放射能を測定している、宅配食品大手のオイシックス(東京)の品質管理部の冨士聡子部長は言う。
「漠然とした不安を持ったお客さまは今でも少なくありません」
同社はベビー&キッズ商品の検出限界を1キロ当たり5~10ベクレルと低く設定し、放射性物質が全く検出されなかった食べ物だけを宅配している。
自治体による検査体制に問題があると指摘する研究者がいる。原発事故以後、食べ物などに含まれる放射能の測定を継続している東京大学大学院助教の小豆川勝見(しょうずがわかつみ)さん(環境分析化学)だ。