アメリカの株価はもう一段下落するときが来た FRBは「インフレ沈静化」のためにも株価を調整
このうち、供給面の問題は金融政策で解決することは不可能だ。FRBが現時点でできるのは、積極的な利上げによって景気を悪化させ、需要を大幅に減少させることだけだ。FRB高官から「株価の急落が好ましい」との発言が飛び出したことは、こうした方針にFRBが本腰を入れ始めたということなのだろう。
過去のインフレ局面でも、株価の急落がインフレの直接的な押し下げ要因となった例は多い。FRBがこうした方針を取るのであれば、やはり株価は一段と値を切り下げることになるだろう。
仮に何らかの理由によって株価が持ち直すことがあったとしても、インフレが高止まりを続けているならば、FRBがさらに積極的な引き締め策を打ち出して株価を押し下げようとする可能性が高い。金融引き締め局面では、FRBは利上げ幅の拡大やバランスシートの縮小ペースの一段の加速など、いくらでも新たなカードを打ち出すことができるからだ。
アメリカの株価は一段の下落も
一方で、パウエル議長もここからさらに金融引き締めのペースを速めることは望んでいないはずだ。引き締めのペースを速めれば、必要以上に景気を冷え込ませてしまう、いわゆる「オーバーキル」の事態に陥る恐れも高くなるためだ。
前出のカシュカリ総裁ではないが、市場が今のFRBの引き締め方針を正当に恐れることにより、このまま株価の調整が進むことを、パウエル議長も望んでいるのではないか。9月2日に発表された8月の雇用統計では、労働力人口が大幅に増加し労働参加率が跳ね上がったことを受け、労働力不足の問題が解消されるとの期待から株価が上昇するなど、市場には楽観的な見方も根強く残る。今後パウエル議長が株価を一段と押し下げるためには、こうした楽観的な見方を極力押さえ込む必要に迫られそうだ。
議長はすでに、20~21日に開かれるFOMC(連邦公開市場委員会)では、3会合連続で0.75%の大幅利上げが打ち出される可能性も十分に高いとの見方を示している。もしここで引き締めのペースを緩めてしまうと、せっかくジャクソンホールで市場に浸透した「インフレ抑制のために積極的な金融引き締めを進める」というFRBのタカ派的なイメージを、再び崩してしまうことになりかねないからだ。
実際、13日に発表の8月の消費者物価指数が予想を上回る伸びとなったことで、0.75%以上の利上げはほぼ確実。株価は少なくとも6月につけた直近の安値まで値を下げるだろうし、そこを割り込んで一段と値を崩すことも十分にありうる。その後はFRBが株価の急落を目の当たりにしても、積極的な引き締め方針を維持することができるのかどうかにかかってくる。その際に目安となるのはインフレの動向だ。インフレが高止まりを続けるなら、FRBは金融引き締めを継続せざるをえず、株価の下落も簡単には止まらないと見ておいたほうがよい。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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