おそらく、彼らの著書や寄稿のなかでも、「クルーグマン(あるいはバーナンキ)はこう言っている → だから、自分の言うことも正しい」という論法が使われているのではないでしょうか。もはや、それが正しいかどうかはもはや重要ではなく、クルーグマン(あるいはバーナンキ)が言っているということが、一番重要だということなのでしょう。
ここ1~2年でリフレを支持する対談相手のなかで、「クルーグマンは……といっている」「バーナンキによれば……である」「世界標準では……である」といった言い回しを使わなかった識者は、私の記憶が正しければ第一生命経済研究所の主席研究員である永濱利廣さんくらいでしょう。
永濱さんは「アベノミクスのすべてが正しいとは思わない。円安の悪影響が及ぶ弱者に対して再分配が必要である」としたうえで、「適正なドル円相場は102円である」とおっしゃっていました。著名なリフレの支持者のなかでは珍しく、現実をしっかりと認識しているエコノミストであると思った次第です。
今の日本経済に適正な為替は1ドル90円台半ば
2月16日のコラム「なぜインフレよりもデフレがいいのか」でも触れましたように、私がこれまで一貫して主張してきたのは、日本の経済構造の変化に合わせて、行き過ぎた円高や、行き過ぎた円安の水準は変わるはずであるということです。
「21世紀型インフレ」が始まる前の2000年代初めであれば、私は適正なドル円相場は120円くらいだと言っていたかもしれませんが、いまや日本経済の構造変化に伴って、行き過ぎた円安は弱者に悪影響が偏る性格を持ってしまっています。
そのように考えると、国民全体にとっても、企業全体にとっても、国家財政にとっても、「三方一両損」ではないですが、ドル円相場は90円台半ばくらいが適正ではないかと思っています。そして、そういったことを考慮に入れながら、経済政策や金融政策は決めていかなければならないと強く願っているわけです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら