韓国で「姦通罪」が廃止された裏事情 あの有名女優も有罪判決を受けた過去

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2008年には、有名女優だったオク・ソリ氏が夫から姦通罪で訴えられた。訴えられたオク氏は逆に「姦通罪は違憲」との訴えを出したが、当時は認められなかった。最近でも人気タレントやテレビキャスターなどの有名人が、姦通罪で訴えたり訴えられたりしていた。

憲法裁判所はこれまで、1990年、1993年、2001年、2008年と4回にわたり姦通罪は合憲との判断を出してきた。だが、時間が経つにつれ、過半数を占めることはできなかったにせよ、「違憲」と判断する裁判官は増えていた。

かつては女性を守るために姦通罪が必要だった?

これについて、社会学が専門で韓国の事情にも詳しい、東洋英和女学院大学の春木育美准教授は、「不倫をされて辛い思いをする人たちはたくさんいたが、1990年代までは、泣き寝入りせずに多額の慰謝料を取るためにも姦通罪は必要悪という考えがあった」という。

当時は働く女性は低所得層が多く、離婚したら生活できないという事情もあった。また、韓国は道徳性を常に意識する社会であり、特に保守層の男性には「性道徳を守れ」という意識も強かった。だが、「男性中心で女性だけに純潔を求めるのはおかしい」という意識もあり、逆に女性からも訴えることができる姦通罪は必要だという意識もあったようだ。

しかし、1990年代以降、韓国では女性運動がパワーを持つようになり、女性差別的な法律の廃止・改正が相次いだ。また、「2000年代に韓国でのグローバル化が進み、外の社会を知ることで価値観も多様化、若い世代の性観念も同時に変わってきた」と春木氏は説明する。

今回の憲法裁判所の判断の中で、姦通罪は合憲という判断を下した2人の裁判官は「姦通は一夫一妻制に基づいた婚姻制度を毀損し、家族共同体の維持・保護に破壊的な影響を与えるため、性的自己決定権の保護に含まれると考えられない」という理由を述べている。だが、「姦通は倫理的非難の対象ではあるが、国家が介入する犯罪ではない」という判断が大勢を占めたようだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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