ヤマト運輸、「すごいサービス」はなぜできる?

「まごころ宅急便」を生んだ現場力とは

昔も今も、「お客さまの声(VOC=Voice of Customer)」に基づいた商品やサービス開発は数多くあります。それを実現するのはもちろん重要ですが、ヤマト運輸はもう一段階、先を行っています。

それは、お客さまも気づいていない「新たな需要」を具現化することです。ユニークなサービスを「お客さんの要望や苦情」になる前の時点で、集配現場で働く人たちの「気づき」を基に事業化し、かつそれを基幹事業に育て上げているのです。

私はそれを「VOC」に対して、「現場の声(VOG=Voice of “Gemba”)」と名づけました。

 お客さまの生の声はバラつきも多く、事業化を考えるうえでは玉石混淆です。それに比べて、「VOG」は経験豊富な現場の人たちが、ふるいにかけて精査した情報なので、事業化できる可能性もより一層、高くなります。

私が「VOC」より「VOG」に、需要創造力として大きな可能性を感じる理由もそこにあります。今回は、その「VOG」による取り組みを2つ解説します。

買物難民と孤独死を減らす「まごころ宅急便」

「荷物を届けた際、私が彼女にひと声かけていれば、孤独死は防げたのに……」  

ひとりの女性社員の、そんな後悔から生まれたのが、「まごころ宅急便」です。女性社員のことは、仮に「Mさん」とします。

ある日、Mさんが独り暮らしの女性高齢者の家に、息子さんからの荷物を届けました。彼女は「何かいつもと様子が違う……」とは感じたものの、次の配達もあったために声をかけ損ねました。ところが、女性はその夜に孤独死し、死後3日目に発見されたのです。

Mさんはショックから立ち直るまで、自責の念にかられてしばらく苦しんだといいます。そのつらい経験をきっかけに、彼女が新たに企画したのが、「まごころ宅急便」です。

これは、65歳以上の要介護者が食品などを電話で注文すると、地元スーパーが品物をそろえ、ヤマト運輸がそれを届けるサービスの名称です。昨年から本格的に始まりました。 

「まごころ宅急便」サービスは、ただの「買い物代行」ではありません。

配達時に同社ドライバーが、訪問相手の体調などを聞き取り、必要があれば、地域の福祉サービスを担う団体にも連絡します。独り暮らしの高齢者の「安心見守りサービス」も兼ねています。

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