面接官が「女子のほうが優秀」と感じるワケ 女子は「優秀だけど採らない」という現実

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一方、人気企業(S、A)が優秀な男子学生を大量に採用してしまうため、それほど人気がない企業(B、C)では、なかなか優秀な男子学生が集まりません。女子は、優秀でもなかなか人気企業(S、A)に採用されないため、こうした企業群(B、C)にも多くが応募します。その結果、「女子のほうが相対的に優秀」という所感を採用担当者が抱くことになるのです。

この連鎖は、企業規模を小さくしたところでも、同じように繰り返されます。男子はそこそこでも1格上の企業に入れ、女子は優秀でも1格下の企業に集まる。だから、どのランクの企業で男女を比べても、「女性は優秀」という評価が聞かれる結果になっているのです。

仕事に子育て、家事の負担で、燃え尽きてしまう女性も

ここまで説明してきたように、女子が男子に比べて、採用時に冷たい扱いを受けてきたのは間違いのない事実です。しかし、ここ1年に限ると、どの企業も女性採用を強烈に推し進める動きが活発化しています。安倍政権の女性活用を推進する姿勢に、企業が重い腰を上げた結果だと言えるでしょう。

大手企業は、横並び志向が強いうえ、目標数値などを出されると未達は許されないというような点取り虫傾向も強いので、しばらくこの傾向は続くと見られます。

とりわけ、管理職の女性比率を目標化すべしという機運が高まる昨今、なんと、中途採用で管理職相応の女性を獲得することに血道を上げる大企業が増えてきました。当然、中途だと即戦力であることを求められるので、同業での職務経験が必要です。そのため、同業の小規模企業にいるベテラン女性に注目が集まっています。

同時に、家事や育児と仕事が両立できるように、制度や設備を競って整えるような競争も生まれています。

それらをトータルで見ると、私が『女子のキャリア』(ちくまプリマー新書)という本で女子の不遇を嘆いた3年前とは、少々雰囲気が変わってきたような気がしています。

このように、以前と比べると多くの女性たちが大企業に入り、仕事をバリバリこなせる環境が整いつつあります。しかし家事や育児となると、いまだにその多くが女性のみの負担という根本的な問題は、変わっていません。

私は、安倍政権が本当に重視すべきポイントは、そこではないかと考えています。そうしないと女性たちは、会社でもバリバリ働き、そのうえ家事や育児もこなさなくてはならない激務の日々を強いられることになります。どこかで力尽きてしまう人が続出してしまうのではないかと、強い危惧を抱いています。

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海老原 嗣生 雇用ジャーナリスト

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えびはら つぐお / Tsuguo Ebihara

経済産業研究所労働市場制度改革プロジェクトメンバー、広島県雇用推進アドバイザー、京都精華大学非常勤講師。1964年生まれ。リクルートグループで20年間以上、雇用の現場を見てきた経験から、雇用・労働の分野には驚くほど多くのウソがまかり通っていることを指摘し、本来扱うべき“本当の問題”とその解決策を提言し続けている「人事・雇用のカリスマ」。リクルートキャリア社のフェロー(特別研究員)第1号としても活躍し、同社発行の人事・経営専門誌「HRmics」の編集長を務める。
ロングセラーの就職活動本『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』『2社で迷ったらぜひ、5社落ちたら絶対読むべき就活本』(共にプレジデント社)の他、雇用・労働分野の著書多数。

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