ずさんな避難計画で原発再稼働に進む日本の現実 「実効性」を検証できないという落とし穴
東海第二原発の避難計画を追う一連の調査報道の中で、「支援」の内実がうかがえる資料を情報公開請求で入手した。内閣府原子力災害対策室が2014年9月26日に東京の原子力規制庁で開催した「東海第二地域ワーキングチーム」第2回会合の議事録だ。内閣府の担当者(当時は規制庁と併任)と茨城県原対課の担当者のほか、福島、栃木、群馬、埼玉、千葉の近隣5県の防災・危機管理の担当者が出席している。
茨城県はこの頃、県内の「マッチング」が一段落したところで、県内で収容しきれない約52万人(当時)の受け入れを近隣県に要請するため会議を開き、各県に避難所の面積調査を実施するよう要請した。
実情を見ず、楽観視する国
だが、近隣県の担当者からは、「面積を2で割って機械的に出した収容可能人数と実際に受け入れられる人数は別物。どちらを算定するのか」(群馬県)、「(機械的に出した収容可能人数が1000人でも、校庭が狭くて50人分しか駐車場が確保できない場合はどうするのか」(埼玉県)など収容人数を算定するリアリティ(現実味)を問いただす質問が寄せられたほか、「県東側が50キロ圏内に含まれる。放射性プルーム(雲)が来た場合は他所に回してくれるのか」(栃木県)、「位置関係から見ると、東京都に要請してもよいのでは」(群馬県)など、受け入れ自体に消極的な意見も上がった。
これに対して、内閣府と茨城県の担当者は「今のところ機械的にマックスで出す収容人数で考えている」「駐車場の問題は今後協議する」として、リアリティのある数字は求めず、あくまでも避難所面積を機械的に2で割った収容人数を出すよう求めた。
また内閣府の担当者は以下のような発言を残している。おそらく各県が避難計画に協力しやすくなるよう、楽観的な見通しを伝えたものと考えられる。
「放出する量、内蔵量は決まっているので、=中略=30キロ全域が=中略=避難と言う状況になるというのは非常に考えづらい=中略=福島のような可能性は低いだろうということは一応、規制庁として示している=中略=方向に汚染が広がるということは、逆に言うと、それ以外の方向は汚染が小さくなるということになるので、対応可能と思っている」
「UPZ(5~30キロ圏内)の全域、全部が避難エリアになるかというと、現実的にはホットスポット的な対応が基本だと思っているので、UPZのほかの圏内で確保したところのエリア等を例えば回していくとか、いろいろと柔軟に対応していく話だと我々は思っている」
つまり、UPZのうち実際に避難させるのは一部にとどまるので、避難させない地域のためにあらかじめ確保していた避難先を融通できるというのだ。想定外の事態に備えて大きく構えるという災害対応の基本原則に反しているだけではない。想定を超える範囲に汚染が広がり、避難を巡って大混乱に陥ったフクシマの反省など、事故からわずか3年半でどこ吹く風だ。
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