ずさんな避難計画で原発再稼働に進む日本の現実 「実効性」を検証できないという落とし穴
独自に入手した一覧表が県の作成文書と裏付けるため、2020年12月半ば、茨城県原対課の山崎剛課長に直撃取材した。山崎課長は「確かにそういう表はある。こうした資料は作成して当然」と一覧表の作成を認めた一方、「以前に聞いていた収容人数よりも少ない市町村が出てきてしまった。あくまでも不足したということを市町村に認識してもらうための資料なので、その段階で県民に公表する必要はない」と開き直り、「隠蔽」を正当化した。
この直撃取材によって茨城県に対する疑いがさらに深まった。2018年の再調査において避難先市町村が県に提出した避難所面積をそのまま避難元(30キロ圏内)市町村に送ったわけではなく、一部市町村の面積データを変更したうえで避難元に送っていたことが判明したからだ。
避難先の市町村が再調査の目的を理解せず、非居住スペースを取り除かない総面積の数字のみを回答し、県が便宜的に6~8割を居住スペースとしてデータを変更しているケースもあったが、これは過大算定を是正するという再調査の趣旨に沿う変更と言えた。だが、わざわざ過大算定となる総面積の数字に変更していたケースが複数見つかったのだ。
この総面積の数字は最初の2013年調査における回答の数字だった。これは再調査の趣旨と明らかに矛盾する。過大算定になると知りつつ、わざわざ総面積の数字に変更していたとすれば、問題が明るみに出て、一から策定をやり直すのを避ける目的しか考えられない。実効性どころの話ではない。そんな虚構の避難計画でも策定しなければならない理由は一つしかない。再稼働に必要な「手続き」だからだ。
なぜ、わざわざ総面積の数字に書き換えたのか――そう尋ねたが、県原対課から返ってきた答えは、「記録が残っておらず、当時の担当者にも問い合わせたがわからなかった」だった。
結局、茨城県内の避難先全30市町村のうち半分にあたる15市町村で過大算定が判明した。私と同僚記者が独自に集計したところ、避難所不足は茨城県内だけで2万人分を超えた。
国も「絵に描いた餅」にお墨付き
原発避難計画の策定を「支援」しているはずの内閣府はいったい何をしていたのだろうか? なぜ、このような無様な事態を防げなかったのだろうか?
原発再稼働に向けた動きが本格的に始まった2013年以降、内閣府原子力防災担当(当初は原子力災害対策室)は策定にあたる道府県との会議を随時開催してきたが、実務者間の会議は常に非公開で、具体的な中身は明らかになっていなかった。
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