アメリカの裏庭「中南米」で中国の存在感が増す訳 ブラジル大統領選が迫る中、周辺国は左派台頭
中南米諸国では20世紀後半以降、周期的に右派と左派が政権を奪い合う歴史が繰り返されてきた(下記図表は、外部配信先ではすべて閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でご確認ください)。
中南米諸国の政権が、左右に激しく動いた大きな要因が、アメリカとの関係だ。
冷戦下でアメリカは中南米諸国の軍事政権や右派勢力を、資金面やアメリカ軍による訓練、アメリカ中央情報局(CIA)による裏工作、人的支援、といったさまざまな形で支援してきたが、右派政権が安定化すると、その支援を控えるようになった。アメリカの存在感が薄まる一方で、中南米諸国では軍事政権からの民政移管が相次いだ。すると貧困層の支持を背景に、今度は左派が台頭し政権を握るようになった。
ところが1980~1990年代の各国左派政権下では、過剰なばらまきなどの影響で通貨・債務危機やインフレを招いた。アメリカが支援することで、ふたたび右派政権が躍進するが、汚職や格差拡大が際立ち、不安定な政権運営が続いた。
「ピンクの波」が押し寄せる
そんな中で中南米国家の1つであるベネズエラに現れたのが、反米左派のウゴ・チャベス氏である。ウゴ氏は1998年の大統領選で貧困層救済のための社会主義的施策を掲げ当選した。
世界最多の原油確認埋蔵量を誇るベネズエラの豊富な石油を、周辺諸国の左派政権に安価で提供したことで、2000年代には中南米諸国でドミノ倒しのように左派政権が生まれた。これは「赤」でイメージされる共産主義革命ではなく、民主的に選ばれた穏健的な左傾化だったことから「ピンクの波」と呼ばれた。
その一方で、アメリカは2001年9月11日の同時テロ以降、「テロとの戦い」に突入し、中南米への対応は置き去りになった。それがかえって左派の台頭を後押しした。この間、中南米各国はチャベス氏を中心に結束を強めたのだ。
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