対面公務に復帰した岸田首相、新味ない会見の内情 満を持して臨んだが、逆風は収まる気配なし
岸田文雄首相は、新型コロナウイルス感染による療養期間を終え、対面での公務を再開した8月31日、首相官邸で記者会見した。
世論の賛否が割れている故・安倍晋三元首相の国葬開催(9月27日開催)という自らの決断について、その意義や目的などを説明した。だが、従来の見解の域を出なかったため、野党や国民を納得させられる要素は乏しく、政権の危機脱出への手がかりが得られたとはいえそうもない。
8月10日以来3週間ぶりで、表向きは「満を持しての官邸記者会見」(側近)だった。ただ、内閣支持率の急落などの政権への逆風をかわすため急遽設定した会見との印象も拭えず、会見でのいわゆる「逆風4点セット(国葬、旧統一教会、新型コロナウイルス、物価高騰)」への対応に関する岸田首相の説明内容も、ほとんど新味はなかった。
しかも15分間にわたった冒頭発言は、従来どおりのプロンプター(原稿映写機)と手元のメモを見ながらの説明に終始。その後の約50分間にわたる記者団との質疑応答も、岸田流の丁寧さは随所に見られたものの、慎重な答弁ぶりは相変わらずで、会見場が沸くような場面はほとんどなかった。
逆風の沈静化を狙う思惑もにじんでいたが…
今回の記者会見は、お盆明け以降、日増しに強まる政権批判に対して、一定の“けじめ”をつける決意があったとされる。9月以降の政治日程を順調に消化することで、「逆風の沈静化」を狙う思惑もにじんでいた。
ただ、事態が悪化し続ける旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題を中心とした政権批判は一向に収まる気配はない。
自民党内には「9・27国葬」を成功裏に開催できれば、「国民的批判は一気に評価に変わる」(自民幹部)との楽観論も根強いが、岸田首相が自ら願い出たテレビ中継付きの国会閉会中審査が「官邸会見と同様の通り一遍の説明の繰り返しにとどまれば、とても反転攻勢のきっかけにはならない」(自民国対)という不安は強まるばかりだ。
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