対面公務に復帰した岸田首相、新味ない会見の内情 満を持して臨んだが、逆風は収まる気配なし

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対面での職務に復帰した岸田首相は、まず自民党本部での役員会に出席した後、首相官邸入りし、会見室での公式会見に臨んだ。

夏休み最終日の21日に新型コロナ感染が判明。軽症だったため、30日までの10日間は首相公邸で療養しながら、国際会議にリモートで参加するなど、オンラインで公務を続けてきた。

官邸での本格公務は半月ぶりだが、濃紺のスーツに青色のネクタイを締め、これまで同様に淡々とした表情で会見をこなした。

約1時間あまりの会見で岸田首相が発信したポイントは、①政府、自民党は旧統一教会とのしがらみを捨てて断固関係を断つ、②ウィズコロナ実現に向けた水際対策緩和では、入国者数上限を1日2万人から5万人に引き上げ、③オミクロン型対応ワクチン接種の開始を9月に前倒し、など。

冒頭では、旧統一教会と岸田内閣の政務三役を含む自民党の国会議員との関わりについて「国民から懸念や疑念をいただいている。党総裁として率直におわびを申し上げる」と陳謝。ほぼ1年前の自民党総裁選出馬宣言で掲げた「信頼と共感の政治」の原点に立ち戻ると力説した。

その後の質疑で、記者団から「(初心を)忘れていたということか」と皮肉られたが、まじめな表情で持論を繰り返すことで交わした。

閉会中審査への出席表明は英断に見せる芝居?

冒頭発言の中で、岸田首相が目を見開いて声のトーンを上げたのは、閉会中審査への自らの出席についてだった。

安倍氏の国葬について「私の決断について、国会での丁寧な説明に全力を尽くし、質疑に答える」とし、テレビ中継付きでの審査を要望してみせた。併せて「政治に対する国民の信頼が揺らいでいると深刻に受けとめている。私が先頭に立ち、政治への信頼回復に取り組まなくてはならない」とその理由を説明した。

閉会中審査については、すでに立憲民主・安住淳国対委員長を中心とする野党各党の国対委員長らが、閉会中審査への首相出席や費用の全体像の早期明示などの対応方針を確認し、松野博一官房長官に伝えていた。

これに対し、30日には自民党が「衆参議院運営委員会で松野官房長官が説明する」との対応を示唆。このため、首相が方針転換させた格好となったが、「もともと首相は自分で説明するつもりだったはずで、英断に見せるお芝居」(共産党)との見方も少なくない。

国会運営で野党側を代表する立憲民主の安住氏は、岸田首相の会見後、「強い世論の批判を受けて政府が方針転換したことは評価したい」と発言。「国民が賛否を判断できるぐらいの情報を、しっかり議会として提供するような機会になれば意義がある。野党がまとまれば与党もやはり聞く耳を持たざるをえない」と語った。 

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