対面公務に復帰した岸田首相、新味ない会見の内情 満を持して臨んだが、逆風は収まる気配なし

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官邸会見に先立ち、岸田首相は31日午前の自民党役員会終了後、官邸で記者団に対し、「旧統一教会について、当該団体との関係を断つことを党の基本方針とし、所属国会議員に徹底することなど、先週来、茂木幹事長に行ってきた指示について内容を確認した」「国葬についてはさまざまなご意見、あるいはご批判を真摯に受け止め、政権の初心に返り丁寧な説明を尽くしたい」などと会見内容を予告した。

自民党役員会では、岸田首相が党総裁として「国民の疑念、懸念は自民党に対する信任に直結するものだ。所属議員は過去を真摯(しんし)に反省し、しがらみを捨て当該団体との関係を絶つことを党の基本方針とし、徹底する」と指示。これを受け、茂木敏充幹事長は「党として重い決定だ。仮に守ることができない議員がいた場合は、同じ党では活動できない」と厳しい表情で記者会見した。

自民は、祝電送付や会合出席、選挙支援など8項目にわたり教団との関係を尋ねるアンケートを所属議員に配布し、実態把握に乗り出している。ただ、党内には「いくら厳しい方針を打ち出しても、問題を抱える議員が正直に回答するはずがない。やればやるだけぼろが出る」との声も漏れる。

思惑どおりの展開に持ち込めるかは見通せず

なお、岸田首相は官邸会見の中で、コロナの水際対策については「9月7日から入国者数の上限を5万人に引き上げる」との具体的な方針を明言した。オミクロン株に対応する新たなワクチンについても「10月から開始予定の接種を9月に前倒しする」と胸を張った。

ただこれも、「すでに政府部内で調整済みの話だが、関係省庁が岸田首相に花を持たせた」(閣僚経験者)との見方が広がる。

こうしてみると、31日の官邸会見は、「政府与党が一体となって、岸田首相の決断力や指導力を国民にアピールする政治的イベント」(同)で、岸田首相自身も「精一杯、演技力を示した」(同)との見方もできる。

「9・27国葬」まで、なお4週間弱の時間が残る。その間の旧統一教会問題やコロナ第7波の推移は予測困難なだけに「岸田首相らの思惑どおりの展開に持ち込めるかは、まったく見通せない」(自民長老)のが実態だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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