脳のシワが多い人ほど「頭が良い」が誤解のワケ 脳研究者はいったいどうやって研究するのか

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生物の研究をする上では、機能欠損と機能獲得という方法が、因果関係を類推する上で有効になります。たとえば、古典的には、薬や電気刺激などで機能を増幅する方法や、臓器を切除したり、脳の神経接続を切断したりする方法がとられてきました。

さらに最近では、遺伝子を直接操作することで、機能を欠損させたり、これまでなかった機能を与えたりすることができます。これによって、その遺伝子が、とある病気にどのように関与しているのか、あるいはその遺伝子を復旧することでどのように回復するのかなどを調べることができます。

欧米ではサルを用いた研究は法律で禁止

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遺伝子の操作や脳の研究などは神の領域で、できれば踏み込んでほしくないという意見も聞きます。実験動物の話をしてきましたが、不快に思った方も多いのではないでしょうか。

人間のエゴで、罪のない動物を利用してもよいのかという議論は昔からあり絶えることがありません。実際、ヨーロッパやアメリカでは、すでにサルを用いた研究は、法律で禁止されつつあります。

ドイツでは、医学部ですらも動物実験を行うことが難しく、コンピューターシミュレーションで勉強すると聞いています。

確かに研究者が、好奇心のままに動物実験を行い、むやみやたらに命を犠牲にしたり、いたずらに病気にしたり、実験をしているようなイメージが強くあるかと思いますが、それは誤解です。

これまでに述べてきたように、いきなりヒトで実験するのは困難です。たとえば、新しい薬や化粧品を開発した際に、その効果や影響を長期にわたって(時には世代を超えて)調べる必要があります。これは、単に好奇心からではなく、その研究をすることが 人間社会やひいては地球全体の利益になると考えた上で行っています。

また、どの実験動物を利用するかには相当慎重な検討がなされています。当然、動物を使わない代替法も十分検討した上で実験を行います。

毛内 拡 お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 助教

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もうない ひろむ / Hiromu Monai

1984年、北海道函館市生まれ。2008年、東京薬科大学生命科学部卒業2013年、東京工業大学大学院総合理工学研究科 博士課程修了。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員、理化学研究所脳科学総合研究センター研究員を経て、2018年よりお茶の水女子大学基幹研究院自然科学系助教。生体組織機能学研究室を主宰。脳をこよなく愛する有志が集まり脳に関する本を輪読する会「いんすぴ!ゼミ」代表。「脳が生きているとはどういうことか」をスローガンに、マウスの脳活動にヒントを得て、基礎研究と医学研究の橋渡しを担う研究を目指している。研究と育児を両立するイクメン研究者。分担執筆に『ここまでわかった! 脳とこころ』(日本評論社)など。

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