150年で「東京~大阪」の“道"はどう変わったか 旧東海道からリニアまで東名阪を結ぶ多様な道

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現在、建設中のリニア中央新幹線の東京~名古屋間は、名前の通り、東海道や東名ではなく、「中央道」に近いルートで建設されており、東海道筋とはまったく別で東京と名古屋を最短距離で結ぶルートとなっている。したがって、品川を出てから名古屋に至るまで、旧東海道のルートとは重なる部分はない。

リニア中央新幹線
開業に向け試験走行を行うリニア中央新幹線(写真:よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

また、大阪へも最短距離で結ぶため、京都は通らず、奈良市付近を通ることが計画されている。鉄道で言えばJR関西本線(名古屋~亀山~JR難波)、道路で言えば、東名阪~名阪国道~西名阪に近いルートだ。どちらも、一時は名阪を最短で結ぶ路線として重宝された時期があったルートである。

しかし、JR関西本線は現在、名阪を直通する列車もなく、特に山間部は閑散路線となっている。なお、運賃・料金が新幹線に比べて安く、大阪・ミナミに直行するため一定の需要がある近鉄の名阪特急は、関西線や名阪国道よりさらに南のルートを走っている。

いずれにしても、中央リニア新幹線の整備により、米原ルートでも鈴鹿峠ルートでもない路線が我が国の大動脈になる未来を想うと、時代によるルートの変遷には興味が尽きない。

ちなみに新東名の起点は、現在の海老名南JCTとなっており、横浜、東京方面へは圏央道などを経由して接続する予定だが、まだ具体的な開通の見込みは立っていない。これが結ばれなければ新東名のバイパス効果も薄いし、「新東名」という名前にもそぐわないといえる。

注目される「旧東海道を歩く旅」

筆者は東京と名古屋を往復する機会が多く、たいていは新幹線だが、車を使う場合は、所要時間や疲労度から新東名を選ぶことが多くなった。

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ただ、新幹線では海が見えるのは、小田原~熱海間と豊橋~三河安城間のほんの一瞬であるし、新東名では駿河湾沼津SA付近から遠くに見える程度で、海岸の景色を楽しむというのは難しい。一方、富士山を間近に仰ぐなら、やはり御殿場を通る東名と新東名(新御殿場ICより東、新秦野ICまでは現在建設中)が一番だ。

近年、旧東海道を少しずつ歩いて全行程を踏破する旅が注目されている。江戸時代には2週間ほどかかっていたとされる江戸と京都の間は、今や新幹線で2時間ちょっと。そんな現代に、人々はどんな思いであえて歩くのだろうか。いつも新幹線や高速道路で一瞬のうちに通過してしまう薩埵峠を私自身も一度ゆっくり歩きたいと思いながら、まだその夢を果たせていない。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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