NHK「ネット受信料は妥当か」議論で起きている事 自民党と旧統一教会の関係を報道しない事情
ところがここへ来て、NHKのうさんくささが露呈している。安倍晋三元首相の銃撃に端を発した自民党と旧統一教会の関係を積極的に報道したのは一部の民放で、NHKは当初ほとんど扱わなかった。その理由は業界内で伝わってきている。NHKの上層部がGOを出さなかったからだ。責任を担う人たち同士で顔色を見合った末に、誰も報道しろと言えなかった、その結果らしいのだ。権力からの圧力があったわけではなく、情けない忖度(そんたく)が理由だった。
確かにこれまで、NHKには政治からの圧力が長らくあった。経営委員会は安倍・菅ラインとつながった財界保守層から人が送り込まれ、NHKの会長人事をコントロールした。メディアを操ろうとする官邸官僚がNHK上層部とパイプを作り、指示を出していた。決定的な証拠があるわけではないが、多くの関係者から漏れ聞こえた話を総合すると、それらは実際にあったと言ってよさそうだ。
権力者たちは軒並みいなくなったのに…
だが今、そうした権力の大元は変わった。安倍・菅政権は終わったうえに安倍氏は亡くなった。また経営委員会を動かしていたと言われフィクサーと呼ばれた財界人、葛西敬之氏も今年亡くなっている。官邸官僚でNHKとのパイプを握ると名前が挙がった連中はすべて退官した。NHK上層部がおびえてきた権力者たちは軒並みいなくなったのだ。
だがまるで幽霊に震え上がる江戸時代の人々のように見えないものにおびえ、旧統一教会について積極的に報道できなかった。公共メディアが聞いてあきれる。ロシアの国営テレビと変わりはしない。そんな状況で、ネット受信料など誰が賛同してくれるのか。
NHKにはネットの時代にも公共メディアとしてなすべきことがあり、新たな社会でもこんな役割を果たしていきたい、そういう理念を胸張って日本国民に正面切ってプレゼンテーションできないと、ネットでの受信料は絶対に賛同されない。お金の話以外は用意された原稿を下を向いて読み上げるだけの現会長の気持ちを動かし、メディアとしての理念を心を込めて語らせない限り、無理なのだ。
だが上層部にそんな人物はいないし、銀行出身の現会長にはメディアの本質など理解できないだろう。NHKは当面、放送受信料でやっていくしかない。ネットでも公共メディアとして実績を重ね、国民の信頼を取り戻せないとネット受信料など取れるはずがないのだ。ネットにもNHKがいてくれてよかった、多くの若者にそう言われる存在にならない限り、NHKの存続は難しい。気にするべきは政治家ではなく、普通に暮らす若者だ。
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