岩手県沿岸部を走る「無料村営バス」の使い勝手 通学に使う「ほぼスクールバス」・田野畑普代編

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タノくんバスのうち、海岸沿いを走るものは島越駅に顔を出す系統と、三陸復興国立公園内の著名な観光地でもある北山崎方面へ向かう系統。だが、子供の通学に最も重きを置いているダイヤで、どの運転系統も朝に田野畑地区へ向かい、午後~夜に各集落へ戻るよう組み立てられている。一般客はスクールバスに便乗させてもらっているような形だ。

ここでもスケジュール組みには苦労し、結局、島越駅―島越港―島ノ沢口間は乗車を断念。バスで10分ほどの距離なので、徒歩でたどり“代行”することにする。

6月9日木曜日、10時08分に三陸鉄道久慈行きで宮古から島越に着き、愛用している金額式回数券(2000円で2200円分使える)も使って1010円支払う。余裕があるから朝もゆっくりになった。シーズンオフながら、この列車は観光客風の客で盛況。どこへ向かうのかわからないが、「北山崎断崖クルーズ」の観光船が発着する島越でも降りなかった。

ここから北、田野畑駅、堀内(ほりない)駅、小袖海岸、久慈駅周辺と、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の舞台となったところが続けてあり、今も余韻が感じられる。鉄道にとってはよい傾向だ。

大きな津波被害を受けた島越駅

島越駅は、三陸鉄道でも大きな津波被害を受けたところの1つ。現在は松前川の北側にレンガ積み風で観光物産館などを兼ねたレトロ駅舎とホーム、タノくんバスも発着する駅前広場があるが、震災前は南側に南欧風の駅舎が建てられていた。しかし津波で完全に流出。高架構造だった線路も破壊された。新駅舎は2014年の運転再開に際して再建されたものだ。線路は防潮堤を兼ねた土盛り構造に改めて復旧している。

旧島越駅跡
現在の駅の隣に残る旧島越駅跡(筆者撮影)

旧駅跡は慰霊公園として整備され、わずかに残った階段と宮沢賢治の文学碑、駅のシンボルだった塔の屋根を模したあずま屋が、過ぎし日をしのばせる。『あまちゃん』では、線路が津波で流されたシーンが、この付近で撮影された。

島越駅から、駅南側にある漁港を通り、島ノ沢口バス停までは歩いて15分ほど。途中に「北山崎断崖クルーズ」の発着場があったが、この日は強風のために欠航だった。三陸地方のつねで、集落は西側の高台にある。駅周辺の集落は4.5kmほど離れた黎明台と命名された新しい住宅地へ移転しており、タノくんバスやくるもん号が通っている。

次は、島越発11時21分発の三陸鉄道で田野畑へ向かい、北山崎方面へのタノくんバスに乗り継ぐのが“順路”だが、田野畑駅発15時35分が第1便だ。そこでひとひねりして、先に普代村営バスに乗ることにする。

それでも時間があるので、まず堀内駅へ。11時55分着、550円。ここは『あまちゃん』で、「袖ヶ浜駅」に見立てられてロケが行われたところだ。今も駅名看板が残されており、記念撮影スポットになっている。日中は数分、観光停車も実施。私が乗った列車に普代から乗ってきた団体客も、しきりにシャッターを切っている。

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