岩手県沿岸部を走る「無料村営バス」の使い勝手 通学に使う「ほぼスクールバス」・田野畑普代編

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島越駅とタノくんバス
再建された三陸鉄道の島越(しまのこし)駅と駅前に停まるタノくんバス(筆者撮影)
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福島県いわき市の勿来から海岸に沿って旅を続けてきて、岩手県下閉伊郡田野畑村が初めて足を踏み入れる「村」だ。北側に続く普代村、野田村とともに広域合併には参加せず、独自路線を保つ。

田野畑という地名が表すように主産業は農業。2022年7月現在、人口は3000人を切ってしまっている。東日本大震災前は、過疎化が深刻になっていたものの4000人を上回っていたから、津波の影響はここでも甚大だ。

田野畑村も隆起海岸の断崖へと続く丘陵地に村域が広がっており、村役場などの行政施設や教育施設が集まる田野畑地区は内陸部に位置。国道45号もそちらを通っている。

3種類の村営交通に再編

それに対し三陸鉄道は海岸沿いを走るものの長大トンネルの連続。細い川が海に流れ込む河口部にある狭い平野に、島越、田野畑の2駅が設けられているが、もともと海沿いの人口は少なかった。田野畑駅も田野畑地区からは遠く、地域名で言えば平井賀。建設時の仮称も平井賀だったが、開業時に村を代表して田野畑になった。

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東日本大震災に伴う津波では島越や平井賀が甚大な被害を受け、当時の北リアス線では小本(現在の岩泉小本)―田野畑間が最後まで運転見合わせが続く区間となった。海岸沿いに幹線道路がなく、列車代行バスは国道45号を大きく迂回していた。

こうした地形、人口分布ゆえ、田野畑村内の公共交通も田野畑地区を中心に組み立てられている。かつては国鉄バス~JRバス東北が輸送を担っていたが、1992年に撤退。以後は村が公共交通を運営している。2010年に再編された際には、総合バス(愛称・タノくんバス)、予約制デマンド式乗合タクシー(愛称・くるもん号)、観光乗合タクシーの3種類に整理された。タノくんバスは2018年に運賃が無料となった。収支がつぐなっているとは思えないものの、100~数百円の運賃を取る市町村営バスが多い中、完全に無料なのは珍しい。

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