実は「酷暑」で世界の旅行業界に激変が起きている 欧州ではハイシーズンや旅行先に変化の兆し

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前出のヴァーガスと同様に、今後旅行の計画を立てる際には、繁忙期前後の「ショルダーシーズン」を検討するのもお勧めだと言う。ショルダーシーズンといえば従来は5月と9月だったが、スティーブスの旅行会社では今では4月と10月がショルダーシーズンと位置づけられるようになっている。

「今は、気候変動が深刻化していく中で暮らしていくために行動を変える調整期間」。そう話すスティーブスは、二酸化炭素をまき散らす飛行機でヨーロッパに飛びながら、気温の上昇に文句を言う旅行者の行動は矛盾していると指摘する。

スティーブスは、旅行会社は気候変動対策の啓発や気候変動に配慮した農業などの取り組みに投資することで、旅行に伴う二酸化炭素排出の軽減に貢献すべきだと言う。排出量取引などを用いたカーボンオフセットも1つの選択肢ではあるが、それだけでは飛行機の二酸化炭素排出を実質ゼロにはできない、というのが専門家の間では一般的な見解だ。

気候変動も旅行先を決める要素に

ワシントンD.C.に拠点を置くシンクタンク、世界資源研究所で気候変動への適応に関する研究を率いているレベッカ・カーターは、たとえ今すぐ温室効果ガスの排出を止めたとしても、さらなる温暖化はすでにシステムに組み込まれているため今後もある程度は続いていく、と話す。

それにもかかわらず、私たちは温室効果ガスを排出し続けているのが現実だ。二酸化炭素排出は増加傾向にあり、地球温暖化はかつてないスピードで進んでいる。

この夏の猛暑は「たまたま起きたものではなく、今後ますます強まっていくトレンドの始まりだ」とカーターは言い、こう続ける。

「どこに出かけるか、いつ行くか、出かけるのかどうか、といったことを決めるとき、私たちはいろいろな要素について考える。気候変動についても、考えをめぐらせるべきだ」

(執筆:Paige McClanahan)
(C)2022 The New York Times

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