「生理用品の無償化」背景にある2つの大きな問題 スコットランドの画期的新法が目指している事

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しかし、複数の慈善組織の調査によると、イギリスの女性が毎月生理関連用品の購入に使う金額は8ポンド(約1300円)から13ポンド(約2100円)に上る。専用下着や生理痛を抑える鎮痛剤、そのほかの付随出費を加味すると、毎月、女子、あるいは女性1人当たり2000〜3000円相当が懐から出ていく。母親と娘など該当する女性が2人いる家庭では4000〜6000円の出費である。

「生理の貧困」は、数百円を払えないほどの生活苦にあえいでいる状態を必ずしも指すのではない。

考えてみてほしい。今どき、携帯電話なしには生活が回っていかないため、ほとんどの人は携帯の支払い料金も含めて外せない必要経費をほかに複数抱えている。最近の物価高による生活費の高騰で、数千円規模の生理関連用品への出費が大きな負担になってくる。このように、生理関連費の出費が厳しい状態も「生理の貧困」と言えるのである。

ロックダウンや物価高も後押し

生理用品に手が届きにくくなるのは、経済的理由ばかりではない。

例えば、新型コロナの感染を阻止するために、イギリスでは2020年3月末以降、数度にわたってロックダウンが実施された。学校は休校となり、多くの店舗も閉鎖状態。通勤も極力避けるようにと「家に留まる」規則順守が義務化された。これによって新たな種類の生理の貧困が生じた。

バーミンガム大学による今年1月発表の調査によると、ロックダウンによって普段は生理用品を無料で入手できる学校、無料で物資が提供される「フードバンク」、地域のコミュニティセンター、図書館、宗教施設などが閉鎖されてしまった。物資の流通が滞ったために、医療機関でさえも生理用品が不足した。

食品や日用品を購買できるスーパーはロックダウン規則の例外とされたが、紙おむつやパスタ同様に生理用品でも買い占めが発生し、在庫が棚から消えてしまった。家族経営の小規模な小売店も営業を許されたが、スーパーで買うよりも生理用品は高額となった。ロックダウンの影響で、職を失い、一家の収入が減る家庭も続出した。

生理用品を経済的及びその他の理由から入手できなかった女性たちはトイレットペーパー、靴下、そのほかの衣料品や布、古新聞などで代用したという。

最近の物価高も追い打ちをかける。イギリスは現在、数十年ぶりの高インフレ状態で、7月にインフレ率は前年同月比10%を超えた。年内に13%に到達する予想も出ている。昨年秋以降、エネルギー市場が逼迫し、光熱費も急騰している。

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