BTSの「兵役問題」が2年間も揉め続けている理由 本人たちの意思不在なまま揺れる世論と政府

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徴兵制というのは「真の男」になるための「通過儀礼」であり、徴兵を終えた男性は「成人」として社会的に認められるようになるのである。もし、不当な方法で逃れたことが発覚すると、「非国民」扱いになる。

大学進学率が高い(約80%)韓国では、大学をいったん休学して入隊する男性が少なくない。兵役が終わると再び大学に戻り、就職活動や進学のために勉強に励む。これが一般的な男子学生のライフスタイルであるが、男性が徴兵制で2年余りの時間を失う一方、女性は男性より一歩早く社会に出ることができる。このようなことから、男性は「徴兵制が不平等である」認識する。

許しがたい「徴兵逃れ」

男性だけに課される兵役の義務は、男性にとって不平等な制度の象徴である。さらに、特権層により頻発する「徴兵逃れ」は、不平等意識を社会全体に拡げている。

韓国の特権層に蔓延している3つの不正がある。それは「大学入学不正」「採用不正」、そして「兵役不正」である。コネや金を利用し、徴兵免除や入隊を回避する特権層の兵役不正は後を絶たず、兵役は経済的な不平等の1つとされている。

例えば、1990年代には徴兵逃れが組織的に行われ、徴兵逃れを手助けするブローカーも存在した。ブローカーを通じ、海外居住や留学など富裕層でないとできない方法を悪用し、兵役を逃れる例が多発し、当時、このような格差社会を揶揄する「神の息子、将軍の息子」という表現が登場した。

神の息子とは特権層の息子で不当な方法で徴兵を逃れた人を意味する。将軍の息子とは入隊はしたものの、コネを利用し、楽な任務を担当する部隊に配置された人のことを表す。このような言葉ができるほど、徴兵制は社会的不平等の象徴となった。

2016年、兵務庁が国会に提出した資料によると、高位公務員(検事など)の息子の4.4%が懲役免除を受けている。これは、一般男性の徴兵免除率0.26%(直近5年間)より16.9倍も多い数字である。徴兵制が社会的信頼を失っているのである。

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