BTSの「兵役問題」が2年間も揉め続けている理由 本人たちの意思不在なまま揺れる世論と政府

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この「兵役判定検査」で男性は1級から7級まで分類され、その中、1級から3級は軍隊に入隊する「現役入隊対象者」となる。B T Sの兵役特例が議論されていることから、B T Sメンバーは1級から3級の判定を受けていることがうかがえる。

現役入隊対象者に分類されても、ただちに入隊する必要はない。入隊時期は自ら決めることは可能であるが年齢制限が設けられている。例えば、大学院在学の場合、28歳まで入隊を延期することが可能だ(健康状態などの特別な事情がある場合30歳まで延期可能)。

前述の通り、スポーツ系の優秀人材に加え、B T Sのような大衆芸能分野の人も推薦を受けるなどの条件を満たせば、30歳まで入隊を延期することが可能である。

入隊者は、陸軍、空軍、海軍、海兵隊のうち、入隊する軍を決めることができる。兵役期間は陸軍が一番短く18カ月。空軍が21カ月で一番長い。兵役を果たすことでもらえる給料は高くても月5万円程度。徴兵されると軍部隊に配属され、集団生活をすることになる。

実家に帰れるのは、年間10日程度で、軍隊生活は社会との隔離を伴う。部隊の外へのアクセスが制限され、世の中の変化や最新情報を手に入れることが困難になり、「時代遅れ」の人間になってしまう。それまでに築いてきた人間関係や専門知識を使うことはほとんどない。

8割以上が兵役を避けたかったと回答

兵役を経験した人は「軍隊は過酷で大変だった」と口を揃える。2019年、韓国女性政策研究院が兵役を終えた男性1117人を対象に行った調査によると、80.8%の人が「方法があるなら、軍隊に行くのを避けたかった」と答えている。また、多くの男性が自身の軍隊経験について「兵役で失ったものが多い」「時間の無駄だった」「給料が安すぎる」と答えている。徴兵制は若い男性の犠牲を伴う制度である。

さらに、70年以上続いてきた徴兵制は、単なる制度としての意味を越え、「通過儀礼」として機能をしている。韓国には徴兵によって男性は「生まれ変わる」という考え方がある。「徴兵を終えた男性=成熟した・頼もしい・男らしい・社会性がある男性だ」という認識が広く共有されている。

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