サイダーの値段「ラムネの10倍だった」意外な歴史 中身の本質的な違いはなかったのに何故??

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”そのころ、びん詰飲料水としては、御承知のラムネがありました。これはサイダーの半分の量で、一本一錢か二錢で賣られていた。そこへ濃緑色のびんに詰めたサイダーを、一本十四、五錢 という値段で賣出したのですから、實に冒險だったと思うのです”(『上方今と昔』)

発売当時14歳だった作家獅子文六によると、“私は、ラムネの方が、ウマいと思った。家の者も、同様のことをいっていた”(『好食つれづれ草』)。

つまりサイダーの味が値段相応にとびぬけておいしかった、というわけではなかったそうです。

実際のところ、メーカーごと、製品ごとに香料が違う程度で、ラムネとサイダーの中身に本質的な違いはなかったのです。

ところがサイダーはヒット商品となり定着しました。なぜサイダーは、ラムネの10倍の値段がするのに売れたのでしょうか?

びんの封印方法とマーケットで差が出た

中身がほぼ同じラムネとサイダーの本質的な違いは、びんの封印方法と、販売先のマーケットにあります。

ラムネは当初さまざまな形式のびんで売られていましたが、最終的にビー玉で栓をする玉瓶の形式に落ち着きました。

再利用が簡単で安価な玉瓶は、中身だけを安く売るのに適したパッケージ。その場で飲んで再利用のためにびんは回収、中身だけのお代を取るというのが、玉瓶のラムネの売り方となりました。

一方で、玉瓶には欠点もありました。長期間保存、長距離輸送ができないということです。

玉瓶は炭酸ガスの圧力でビー玉をゴムに押し付けて封印しますが、炭酸ガスが隙間から徐々に抜けてしまうので、長期間は保存できませんし、輸送時の振動にも弱いのです。

長期間保存、長距離輸送ができないラムネは、工場周辺にしか売れませんでした。

一方のサイダーは、明治30年代後半から王冠で密封するようになりました。使い捨ての王冠の分値段が高くなりますが、玉瓶と異なり長期間保存/長距離輸送にも耐えることができました。

サイダーは長期間保存/長距離輸送可能という特性を活かして、ラムネには進出不可能だった新しいマーケットを開拓したのです。

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