NHK会長が怒鳴り散らすと、何がマズイのか トップは世間の受け止め方を考えるべき

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多くの場合、トップの「感情的な発言」は組織全体にとってマイナスの影響を与える。2000年に戦後最大の集団食中毒事件でマスコミに追いかけられた雪印乳業の石川哲郎社長が口にした「私だって寝ていないんだ」という発言はその典型といえる。

当時、この社長は徹夜での社内会議の後で会議室から出てきた後で、マスコミに追いかけられて感情的に答えたのが「私だって寝ていないんだ」発言だった。

こういう場合、正義の衣を来て嵩にかかって断罪口調のマスコミの対応もどうかと思うが、結果的には大きな社会問題を引き起こしながら「寝ていないんだ」と居直った会社のトップという印象だけが世間では定着した。

トップとして発言してはいけない言葉がある

マスコミの質問の仕方の是非が問われたとしても「それを言っちゃあ、おしまいよ」という発言だったといえる。組織のトップとしてけっして口にしてはいけない言葉がある。

今回の籾井会長の発言も、追及した議員の質問が適切かどうかよりも「それを言っちゃあ、おしまい」という子どもっぽい態度を見せてしまったことが致命的だといえる。

おそらく、籾井会長による以前の従軍慰安婦などについての政治的な発言に賛同する人たちでも、会長の「子どもっぽい」姿には少なからずショックを受けたに違いない。組織の長として「ありえない」という感触を持ったのではないか。安倍首相や菅官房長官ら総理官邸の幹部も正直、呆れただろうと想像する。

「色をなして怒鳴る」という対応を見せてしまった籾井氏。これまでの問題発言などをなんとかこなして会長職にとどまってきたが、今度は進退がつまってしまったのではないかと感じる。NHKの歴史上、これほどいろいろ物議をかもしていろいろな映像を残したトップも珍しい。

ある意味ではこれほど「人間的」ともいえる会長が次はどんな面白映像を残してくれるのか、個人的な興味は尽きないけれど。

水島 宏明 上智大学文学部教授

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みずしま ひろあき / Hiroaki Mizushima

1957年生まれ。東京大学卒業。札幌テレビ放送入社。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー 『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレク ターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。「ネットカフェ難民」の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授、2018年から現職。

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