日中韓を振り回す「ナショナリズム」の正体 第1回 熱くなる前に、身近なことから考えよう

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2014年2月22日に韓国で行われた反日デモの様子(写真:AP/アフロ)
ナショナリズムとは何か。日中韓で燃え上がる“憎悪の連鎖”を、どのようにして断ち切ればいいのか。新刊『日中韓を振り回すナショナリズムの正体』において、「自虐史観と居直り史観をともに排して、歴史を直視すれば、解決の道は見えてくる」と説いた保阪正康氏の講演を、3回に分けて載録する(2014年10月7日、丸善丸の内日本橋店で行われた講演内容を編集部でまとめました)。

 

昭和史の泰斗2人が、いま日中韓で燃え上がるナショナリズムの実体について分析。背景にある歴史問題を直視し、憎悪の連鎖に歯止めをかけるための提言を行う。そして、他国に振り回されず権力に踊らされない、健全な日本人のナショナリズムのあり方についても示す。

こんばんは、保阪正康です。今日は半藤一利さんと私の対談本『日中韓を振り回すナショナリズムの正体』についてお話しさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

この本の中でも言っていることですが、私たちは「ナショナリズム」と言ったり、考えたりするときに、何か大きな錯誤があるんじゃないだろうかと考える必要があります。

それは、「19世紀、20世紀、国民国家ができて、国民統合の意識としてのナショナリズムが……」というような、硬い、あるいは学問上のナショナリズムというものではなく、私たちはナショナリズムというものをもっと身近に考えることができるのではないかということです。

実は、私たちの日常の生活規範、あるいは道徳的規範、あるいはいろんな倫理観というものは、ナショナリズムじゃないだろうか、と私は考えます。もっと具体的に言うと、ナショナリズムというのは上部構造と下部構造があるということです。

上部構造というのは、国策を決める政策集団の基準です。「国益の守護」「国権の伸張」「国威の発揚」といったものです。これらは、国策を決めるときの基準になっていますね。日本という国家を考えた場合でも、それが基準になってきたと言っていいでしょう。

そして、それは、ナショナリズムの上部構造だということです。官僚・軍人、あるいは政治家などが国策を決めるときの基準になるもの……。それはナショナリズムの上部構造と言うべきものです。

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