「交渉をとことん優位に運ぶ人」の意外すぎる秘訣 警戒心を解き記憶に残りやすくする「驚きの技」

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アメリカの世論調査機関ピュー研究所の世論調査でも、このことが明らかになっており、『ザ・デイリー・ショー』や『コルベール・レポート』のような面白いニュース番組を観ている人たちのほうが、新聞やケーブルテレビや全国ネットテレビのニュースから情報を得ている人たちよりも、最近のできごとをよく記憶していることがわかった。

さらにある研究では、短期記憶に関する簡易検査を受ける前に、映画の面白いシーンを観た人たちは、何もせずに同じ時間ただ座っていた人たちに比べて、2倍の情報を記憶していたことが明らかになった。

教室でも、ユーモアは効果を発揮する。学術誌『実験教育ジャーナル』において発表されたアブナー・ジブによる研究論文では、ユーモアのある教材で授業を受けた学生たちは、そうでない学生たちよりも授業内容をよく覚えており、期末試験の点数が11%高かったことがわかっている。

ジョークを効果的に利用したオバマ大統領

そういうわけで、政治家がお抱えのスピーチライター軍団にプロのコメディアンを加えるのも、めずらしいことではない。

オバマ大統領は2011年の一般教書演説において、政府の効率性を向上させるべき分野として、次の例を挙げた。

「サケが淡水にいるときは内務省の管轄です。しかし、サケが海水にいるときは商務省の管轄になります」ここで、ひと呼吸。「問題がさらにややこしくなるのは、スモークされたときです」会場は爆笑に包まれた。

ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)によるリスナー調査の「一般教書演説でもっとも印象に残った言葉を3つ挙げてください」という質問に対し、もっとも回答数の多かった言葉はなんだったか、わかるだろうか?

(答えは「サケ」)

コメディアンのジョン・シャーマンが言っているとおり、「聴衆から笑いが起こるのは、それだけ熱心に聴いているしるしだ」

(翻訳:神崎朗子)

ジェニファー・アーカー スタンフォード大学ビジネススクール教授、行動心理学者

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Dr. Jennifer Aaker

スタンフォード大学ビジネススクールのゼネラル・アトランティック・プロフェッサーで行動心理学者。目的と意義が個人の選択に及ぼす影響や、テクノロジーが人間の幸福や企業の成長にプラスの影響をもたらす可能性に関する研究の第一人者。博士の研究は『エコノミスト』『ニューヨーク・タイムズ』『ウォールストリート・ジャーナル』『アトランティック』『サイエンス』などの主要紙誌でも紹介されている。Distinguished Scientific Achievement Award(科学部門顕著業績賞)、MBA年間最優秀教授賞などを受賞。

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ナオミ・バグドナス スタンフォード大学ビジネススクール講師、エグゼクティブ・コーチ

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Naomi Bagdonas

スタンフォード大学ビジネススクール講師、エグゼクティブ・コーチ。組織のリーダーやフォーチュン100社、非営利組織などに向けたインタラクティブなセッションを促進し、エグゼクティブやセレブリティが『サタデー・ナイト・ライブ』や『トゥデイ』等の番組に出演する際の指導も行っている。〈アップライト・シチズンズ・ブリゲード・シアター〉で正式なトレーニングを受けたバグドナスは、劇場の舞台に立ってコメディーを実演し、サンフランシスコ郡刑務所では、レジリエンスを高めるための即興コメディーを教えている。

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