変わりゆくクルマの顔を支える最新ライト最前線 前方を照らすだけじゃない、灯火類の進化とは

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e-グリル
e-グリルの活用例(筆者撮影)

さらに将来的に普及が期待される自動運転車では、他車両や歩行者などとのコミュニケーションとしても使えることも注目点だ。例えば、横断歩道を渡ろうとしている歩行者を見つけ、手前で停車した場合をイメージしてもらいたい。現在であれば、ドライバーと歩行者がアイコンタクトや手のジェスチャーなどでコミュニケーションを取ることで、先に歩行者へ道路を横断してもらうなどの意思疎通ができる。ところが、もし将来的に完全な自動運転車が実用化されたとすると、車両にはドライバーがいない場合も想定できる。e-グリルは、そんなときに「お先にどうぞ」などの文字を電光掲示板のように“光”を使って出すことができ、歩行者に意思を伝えることもできるという。もちろん、フロントグリルが走行中に光ったり、光の文字を出したりなどは、法規の改定なども必要であるが、よりクルマにアイデンティティを持たせたり、安全性の向上などに役立てることもできるという点では、注目すべき技術だといえよう。

視認性の次、コミュニケーションとしてのライト技術

ニアフィールドプロジェクション
ニアフィールドプロジェクションの本体(写真:市光工業)

ほかにも市光工業では、今回、車両が曲がる方向などを路面に映し出す「ニアフィールドプロジェクション」も展示した。これは、同社のプロジェクション技術を応用したもので、車両に搭載したプロジェクターが、交差点などで自車の曲がる方向などを路面に投影する仕組みだ。これにより歩行者や自転車、バイクといった車両周辺の道路利用者に、自車の動きを知らせることで、注意喚起し、急な飛び出しなどによる事故の低減につなげることを目的とする。

ニアフィールドプロジェクション
ニアフィールドプロジェクションの使用例(写真:市光工業)

このように、ドライバーの視認性をはじめ、車両周辺への情報伝達など、より多様な役割を持たせることで、さらなる安全性の向上が期待できるのが次世代のライティング技術だ。とくに夜間や周囲の視界が徐々に悪くなる薄暮時間帯は、昼間と比べ死亡者が出るなど重大な結果を招く事故が多いといわれている。それだけに、クルマの光をより進化させることは、安全性の向上や事故低減へさらに寄与できる可能性を秘めている。痛ましい交通事故を減らすためにも、こうした新しいライティング技術には、今後も注目していきたい。

平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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