変わりゆくクルマの顔を支える最新ライト最前線 前方を照らすだけじゃない、灯火類の進化とは
ただし、例えば市街地などでは、ハイとローの切り替えが頻繁となる場合も多く、切り替え忘れなども起こる。そこで登場したのがADBシステムだ。夜間走行中にハイビームのままにすることで、運転者は可能な限り前方視界を確保できるし、煩わしいハイ/ローの切り替え操作も必要ない。しかも他車両などの範囲のみ光を遮光することで、相手への眩惑も防ぐ。似たようなシステムには、ハイとローを自動で切り替えるオートハイビームもあるが、常に光が遠くを照射することで、より前方視界を確保できるという点ではADBシステムのほうが上だといえる。
話を戻すと、同社製の従来型ADBシステムは、片側12個、左右24個あるLEDの点灯や消灯を1個ずつ制御し、フロントカメラで検知した対向車や先行車のドライバーへの眩惑を避けながら、必要なところだけをハイビームのまま遠くまで照射する。これにより、つねに視認性の高い状態を維持することが可能だ。
安全運転のために照射範囲を精密に制御
一方、HDライティングでは、LEDの照射範囲を数万ピクセルとさらに細かく分割し、個々の光を制御することで、ヘッドライトの光により多くの機能を持たせている。まず、ハイビーム時は、対向車や先行車が走る範囲を遮光するだけでなく、標識にあたる光も抑えることが可能だ。他車両のドライバーへの眩惑を防ぐだけでなく、標識から反射する光も抑えることで、自車のドライバーが標識を見やすくする効果を生む。さらに歩行者を検知した場合は、上半身のみを遮光することで歩行者への眩しさに配慮するなどのアップデートも行われている。
また、ロービーム時には、路面に光の線や記号を照射することで、ドライバーにレーンガイドやナビゲーションといった情報を表示して運転を支援する機能も有する。さらに横断する歩行者の足元を強調して照らすことで、歩行者の発見を早め、安全性を高めることも可能だ。
まさに次世代のヘッドライトといえる技術だが、課題もある。市光工業の担当者によれば、「機能を実際にどれだけ使えるかは、カメラやセンサー類の検知能力が大きく影響する」という。例えば、周辺状況の検知ユニットがカメラを主とする場合、光が少ないほどカメラは物体などを映しづらくなるため、暗い夜道では検知できる範囲が制限されやすい。そのため、車両周辺データと連動するHDライティングの機能にも、おのずと限界が出てくるという。
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