空き家問題、移住希望者いるのに解決せぬ根本理由 空き家情報サイトの運営から見えてくるもの

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これまでの投資実績は複合施設やアパートメント事業の計3件で、ファンド規模は30億~50億円という。融資やファンドのほかにも、空き家の活用術や地域の特性を踏まえた事業展開の相談にも応じるコンサルタント事業も手掛ける。

井上氏が続ける。

「人を育成・発掘するために、地域ごとの起業家たちと組んでコンサル業を行っています。『移住者からこんないい案が出たんだけど誰か一緒にやりたい人いないか』や『この地域にこんなビジネスチャンスがあるんだけどいい移住者を知らないか』などの会話が生まれる場所としています」

自治体は人員も時間も足りない

空き家の数が増えていく一方で、自治体の管理が追いついていない。そんな実態が明らかになった調査結果もある。

総務省と国土交通省が2017年10月から2019年1月にかけて実施した「空き家対策に関する実態調査」によると、空き家対策に取り組む自治体からは、対策を講じることのできない理由として、「人員不足のため空き家対策の準備が困難」「管理不全の空き家等に対する個別の対応要請が多く、その対応で手一杯であり対策計画を策定する余裕がない」といった声が頻発した。

要は、人員と時間が足りないという指摘だ。実際、この調査からは、空き家対策を1人から3人程度の人員で実施せざるをえない自治体の実態も浮かび上がっている。

井上氏が指摘するように、空き家問題を自治体のみで解決するのは、もう限界に達しているのだ。

「今後、空き家が増え続けていくと、行政だけに頼らない対策が必要となってきます。空き家の所有者からの要望を個別に聞き、行政や空き家の利用希望者に橋渡しする。その業務を一元的に管理できる人材が求められていると考えます」

その業務を担うのが空き家の相談員だ。

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