サクラ/eKクロスEV「ヒット間違いなし」の理由 それを裏付ける「低グレード」の販売割合

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i-MiEVでの経験があったからこそ、eKクロス EVでは先進性よりも経済性や実用性をアピールしたいと考えたのは、ある意味、当然のことだろう。そして、その思惑はおおむねうまく進んでいる。

予約受注の段階では、上位グレードにオプションを満載した、いわゆる“全部載せ”の仕様が人気だったという。これは、BEVに興味のある人=先進性を求めたユーザーが関心を寄せた結果だ。俗に言う“アーリーアダプター”である。

「eKクロス EV」の上級グレード「P」(写真:三菱自動車)

しかし、それだけでは息切れしてしまう。過去のi-MiEVでは、そうだった。ところが、今回は様子が違うようだ。「価格の安いグレードを経済合理性から検討したうえで選ぶユーザーが追いかけてきた」と広報は言う。

最終的には、正式発売となる6月16日の時点で上位グレードの比率は57%、下位グレードは43%となった。受注数は約3400台で、月販目標の4倍を達成。東京や愛知、福岡といった大都市圏だけでなく、群馬や岡山のような地方都市の販売も増えているという。

eKクロス EVの開発担当者は「大きな手ごたえ。まさにBEV普及の元年になるのではないか」と自信を見せる。ちなみに、購入者のおよそ8割は「60代男性」だという。

軽自動車の本質で選ばれる

おもしろいことに、先進性を売りにする日産のサクラは、さらに上位グレードの割合が低く、最上位グレードが36%、ミドルグレードが61%、下位グレードが3%。こちらは「2台目以降の複数所有」「エンジン車からの代替」が多いという。

「サクラ」の上級グレードとミドルグレードは外観差がほとんどない(写真:日産自動車)

きっかけは先進性でも、経済合理性を重視して選んだ人が多いのだろう。予約台数は、発表3週間後の6月13日で1万1000台超。購入世代は、30代以下が11%、40代が18%、50代が24%、60代が26%、70代以上が21%と、eKクロス EVと比べると、幅広い世代が買っている。

先進性で売る日産と、経済性・実用性を前面に押し出す三菱。しかし、実際に売れ行きが伸びているのは中位・下位のグレードで、先進性よりも経済合理性で選んでいる人が多い。

軽自動車の本質は経済合理性にあるから、現実的な選ばれ方をしている今回の2台は、なかなかのヒット作となるだろう。街中で“小さなBEV“を頻繁に見かけるようになる日も近そうだ。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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