サクラ/eKクロスEV「ヒット間違いなし」の理由 それを裏付ける「低グレード」の販売割合

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日産はサクラを「軽自動車のフラッグシップ」として扱い、先進性を強くアピール。車体骨格などのベースとなった「デイズ」とは異なるBEV専用の名前を与えたのも、“別格扱い”を狙ったのが理由だろう。

一方、三菱はベースとなった「eKクロス」の名前に「EV」を追加した格好だ。これは、eKクロスのバリエーションの1つとしてeKクロス EVを売っていこうという姿勢を表している。

「サクラ」のベースとなった「デイズ」は外観が大きく異なる(写真:日産自動車)
「eKクロス」と「eKクロス EV」の外観イメージは大きく変わらない(写真:三菱自動車)

試乗会で聞いた話では、三菱としては「先進性よりも、経済性や利便性といった経済合理性をアピールしたい」という。自宅で充電できる人にはBEVを、そうでないのであればガソリンエンジン車を売る。「複数のパワートレインを用意し、お客さんに選んでもらう」という戦略だ。

これはプジョーが掲げる「パワー・オブ・チョイス」と同じ考え方だ。プジョーも「208」と「e-208」のように、同じモデルにガソリン車とEVを用意し、同じような装備と価格帯で売っている。

i-MiEVでの苦い経験

中身は同じでも売り方が異なるのは、メーカーとしてのスタンスの違いに理由を見出すことができる。日産は、ハッチバックの「リーフ」を全世界で50万台以上販売してきた実績がある。2021年にはBEVのフラッグシップとしてSUVの「アリア」もリリースし、BEV普及に全力投球しているメーカーなのだ。

だから当然、軽自動車のサクラもBEVであることを前面に押し出し、さらなるBEV普及を目指す。ある意味わかりやすい戦法だ。

ところが、三菱は意外にもBEVに及び腰。慎重とも言える。その理由は、リーフよりもおよそ1年早く市場投入し、「世界初の量産車」となったi-MiEVでの苦い経験にある。

初の量産EVという触れ込みで発売された「i-MiEV」(三菱自動車)

i-MiEVは、“時期尚早”にすぎた。なにしろ、デビューした2009年の時点ではほかに量産BEVがないため、車載用バッテリーが高かった。結果としてi-MiEVの販売価格は、およそ460万円にもなり、補助金を利用しても300万円以上と軽自動車としては高すぎたのだ。

さらにバッテリー容量は16kWhで、航続距離はカタログ値で160km。今なら「BEVは街乗り中心だから航続距離が短くてもOK」と理解されつつあるが、当時はこの数値に納得できる人は少数派だった。先進性をいくらアピールしても、「高いのに航続距離が短くて使えないクルマ」として敬遠されたのだ。

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