新型クラウンの出ばなをくじいた出荷遅れの正体 トヨタから「品質確認」通知、EVリコール影響か

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bZ4Xのリコールをめぐっては、トヨタは同車種を製造する元町工場(愛知県豊田市)第1ラインの稼働を停止して、原因究明にあたっている。稼働停止期間は7月末までだったところが、8月末までに延びている。新型クラウンはbZ4Xと同じ元町工場の第1ラインのほかに、堤工場(豊田市)でも生産する予定だ。bZ4Xのリコールの原因調査が長引くと、新型クラウンの出荷開始がさらに遅れる可能性がある。

皿田氏は新型クラウンについて「半導体などの部品供給で課題がある。この機会を逆に利用させてもらって品質の最終点検に時間を割きたい」とする。トヨタのある執行役員は、「かなり急いで開発してきたので、トータルで品質がどうなのか、腰を据えて確認する必要がある」と話す。

戦略づくりに社長の意向が反映

新型クラウンの戦略づくりには豊田社長の意向が色濃く反映されている。もともとマイナーチェンジが予定されていたクラウンは豊田社長の発案で全面刷新に変わり、2年半で4車形を開発した経緯がある。

販売店の店頭には新型クラウンの横断幕は掲げられたが、展示車はない(記者撮影)

トヨタの看板を背負う主力車のワールドプレミアだからこそ、問題解決までは延期すべきだったかもしれない。それでも開催に踏み切ったのは豊田社長の「話題づくりにもなる」という鶴の一声だった。発表会のゴーサインが出たのは開催3週間前だったという。

コロナ禍では半導体不足もあり新型車の投入が遅れる自動車メーカーも少なくないが、トヨタの場合、新型車を予定どおり発表してきた。「新型コロナ収束後の経済復興の牽引役になりたい」との強い思いからだ。トヨタは国内の登録車販売で50%を超えるシェアを持つ圧倒的な王者であり、トヨタが踏ん張る意義はある。

しかし、「安全」や「品質」は絶対におろそかにしてはいけない。アメリカのリコール問題で教訓を得たトヨタにとっては言うまでもないことだが、あらためて難しい局面に立たされていると言える。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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